何も音がしていないはずなのに音が聞こえると、「病気ではないか」と不安になる方は多いと思います。
このような「耳鳴り」が起こる理由はさまざまあり、すべての原因が病気だというわけではありません。
耳鳴りが起きた際に不安にならないためにも、耳鳴りが起こりやすい状況や病気に伴う症状について知っておくことは大切です。
この記事では、片耳だけ「キーン」と音がする時など、耳鳴りが起こる際に考えられる原因を解説します。耳鳴りへの基本的な対処法も紹介するので、生活するなかで耳鳴りが気になってストレスに感じている方は、ぜひ参考にしてください。
そもそも耳鳴りって何?概要や症状について解説
「耳鳴り」とは、周囲で何も音がしていないのに音が聞こえる現象のことです。耳鳴りが起こるメカニズムは完全には解明されておらず、一過性のものや病気が関係している可能性があるとされています。
耳鳴りが起こるケースとして代表的なのは、飛行機に乗って気圧の変化で起こる耳鳴り、トンネル内で起こる耳鳴り、静かな部屋で起こる耳鳴りなどです。これらの一時的な耳鳴りは誰にでも起こり得ることなので、過度に心配する必要はありません。
一方、耳鳴りだけでなく頭痛やめまいを伴ったり、慢性的な耳鳴りが長時間にわたって続いたりする場合には、何かしらの病気が関係している可能性があるため注意が必要です。
病気の可能性がある症状や病気の一例は後述しているので、耳鳴り以外の症状も出ており心配に思っている方は、そちらもぜひ参考にしてください。
耳鳴りの原因として考えられるもの
耳鳴りが起こる原因はさまざまありますが、主に挙げられるのは以下のとおりです。
- ストレスや過労
- 爆音や騒音
- 耳垢や汚れ
- 加齢による神経機能の低下
- 病気に伴う症状
それぞれについて、以下で詳しく紹介します。
ストレスや過労
日々受けるストレスや仕事などによる過労が、耳鳴りの原因になることがあります。これは、生命維持のために無意識的に働く「自律神経」の乱れが関係するためです。
自律神経とは、人間の体温や血圧などの機能をコントロールするために、自分の意思とは関係なく働き続ける神経のことです。ストレスを受けたり疲労が溜まったりして自律神経が乱れると、体にさまざまな不調があらわれます。
自律神経が乱れることで音や体のバランスを感知するセンサーに異常をきたすと、耳鳴り・耳閉感・難聴・めまいなどの症状が起こるようです。
ストレスによって耳鳴りが起こり、今度は耳鳴りが起こること自体がストレスになってしまうという悪循環に繋がる可能性もあるため、溜まったストレスは日々解消させて溜めないことが大事だといえます。
爆音や騒音
大きな音を聞いたあとに耳鳴りが起こる場合は、「音響外傷」の可能性があります。
音響外傷とは、音を感知する耳内の有毛細胞が損傷を受けることで起こる難聴の一種です。例えば、音楽プレーヤーやコンサート会場で大音量の曲を聞いた際などに発症することがあります。
軽度の音響外傷であれば、時間の経過に伴い有毛細胞が修復して症状は改善するようです。しかし、長期的に改善しない場合や痛みを伴う場合には、医療機関を受診して診察を受けることが推奨されます。
耳垢や汚れ
耳垢や汚れが原因となって、耳鳴りが起こるケースもあります。
耳垢とは、皮膚やほこりなどが混ざり合ってできる垢のことです。細菌の感染から耳の中を守る役割もあるため、必要以上に耳掃除をしてすべて取り除こうとする必要はありません。
しかし、耳の中に耳垢が溜まりすぎていると、耳鳴りや閉塞感に繋がることがあります。耳垢が鼓膜にあたってしまうと、本来聞こえない音が聞こえるといった症状が出ることもあるようです。
また、小石や水、虫などの異物が耳の中に入ると、細菌に感染して鼓膜が病気になり、それが原因で耳鳴りが起こることもあるとされています。
安部浩一
医療法人社団 仁明会 安部医院 院長
細菌感染を防ぐためには、基本は自分で耳掃除をしないことです。耳掃除の頻度は耳垢の貯まり方により個人差があり、正しい頻度はありません。少なくとも自分では入口のみの掃除にとどめておくことがいいです。
加齢による神経機能の低下
特に耳鳴りの原因が見当たらない場合には、加齢によって神経の機能が低下したことで耳鳴りが起こっているのかもしれません。
音を感知する有毛細胞が、加齢によって徐々に減少することで起こる難聴を「加齢性難聴(老人性難聴)」といいますが、主な症状として耳鳴りがあります。
加齢性難聴は徐々に進行していくものなので、一般的には自覚症状がないことが多いようです。加齢性難聴に根本的な治療法はないとされていますが、補聴器を使用して音の聞こえを補うことはできます。
病気に伴う症状
ここまで紹介した原因のほかに、何かしらの病気が原因となって耳鳴りが起こっているケースもあります。
耳鳴りの症状を伴う病気の一例として挙げられるのは、以下のとおりです。
- 突発性難聴
- メニエール病
- 耳垢栓塞(じこうせんそく)
- 耳管狭窄(じかんきょうさく)
- 耳硬化症(じこうかしょう)
- 高血圧
- 脳梗塞
- 聴神経腫瘍
上記はあくまでも一例ですが、病気によっては、めまい・頭痛・耳が遠くなるなど、ほかの症状があらわれることもあります。
もし病気が関係して耳鳴りが起きている場合には、その原因を特定して治療を行えば、耳鳴りの症状も軽減することが期待できるでしょう。病気を疑う際には、耳鼻科などの専門医に診てもらい、適切な診断と治療を受けるようにしてください。
安部浩一
医療法人社団 仁明会 安部医院 院長
耳鳴りが一時的なものは別として、継続する耳鳴りは難聴の可能性があるため耳鼻科で精査をすることが大切です。遅くなると改善が難しくなります。日数の目安はありませんが、持続するようなら可及的速やかに受診することをお勧めします。
片耳だけ「キーン」と耳鳴りがする場合に考えられる病気
耳鳴りとして聞こえる音には、「ブーン」「ジージー」「ザー」「ゴー」など、さまざまな種類があります。
なかでも片耳だけに「キーン」という音が繰り返し続く場合には、前述した病気のなかでも、突発性難聴・メニエール病・聴神経腫瘍が関係している可能性が考えられます。
病気は人によって症状が異なる場合があるため、症状が気になる場合や耳鳴りがつらいと感じる場合には、片耳・両耳問わず医療機関を受診するようにしましょう。
静かなところで耳鳴りがするのはなぜ?
日常生活を送るなかで、静かな場所に行った時に耳鳴りが起こった経験はないでしょうか。静かな場所で「シーン」と聞こえる耳鳴りは、誰にでも起こり得ることです。
これは、内耳が自発的に音を発する現象で、「自発耳音響放射(じはつないじおんきょうほうしゃ)」と呼ばれています。健康な方でも約4割が経験したことがあるとされているため、珍しいものではありません。
防音室や無音室のように音を遮断した場所で発生しやすいですが、それは静かな場所にいることで、普段であれば気にならない音が気になってしまうことが原因だと考えられます。
静かな場所にいる際、どうしても耳鳴りが気になってストレスになる場合には、川のせせらぎや雨の音など、リラックスできるような自然音を流しておくと良いでしょう。
耳鳴りが気になる場合の対処法
「耳元でザワザワ聞こえる」「片耳だけキーンとする」など、耳鳴りの症状が気になる際には、以下の対処法を試してみてください。
- 原因を特定するため、まずは耳鼻科を受診する
- 耳鳴りが起こりやすい状況を避ける
ここからは、対処法の詳しい内容について解説します。
原因を特定するため、まずは耳鼻科を受診する
耳鳴りの症状は聴力が低下していることで起こることがあります。そのため、まずは聴力低下に原因があるかどうかを耳鼻科で診察してもらう必要があります。
聴力低下の早期治療で耳鳴りが改善する場合もあるため、まずは早期に耳鼻科を受診しましょう。
そのうえで特に問題がなければ、耳鳴りを過剰に意識しないことも大切です。
耳鳴りが起こりやすい状況を避ける
そもそも耳鳴りが聞こえる前に、耳鳴りが起こりやすい環境を避けることも重要です。耳鳴りが起こりやすい状況を把握して、それに関連する行動を意識的に控えるようにしましょう。
具体的には、以下のような状況が考えられます。
- 大音量で音楽を聴かない
- 十分な睡眠をとる
- ストレスを溜めすぎない
- 気圧の変化に気を付ける
- カフェイン・アルコールを控える
- 寒い場所へは行かない
大音量で音楽を聴くことは耳鳴りの原因となりやすいため、音楽を聴く際には音量に気を付けましょう。音楽だけでなく、イヤホンをつけてスマホを操作したり、ゲームをしたりする際にも音量には注意が必要です。
また、自律神経が乱れることで耳鳴りが起こるケースを踏まえて、十分な休息と睡眠をとって、ストレスを発散させるために趣味などで気分転換することをおすすめします。熟睡するために、必要に応じて使っている寝具を見直すのも良いでしょう。
神経が興奮して耳鳴りを引き起こしやすくする、カフェイン・アルコールの過剰摂取は避けることが望ましいです。さらに、気温が下がって耳への血流が悪くなることを避けるためにも、冬は暖かく過ごすことを意識してみてください。
このように、耳鳴りを誘発しやすい環境を意識的に避けることで、症状の軽減を目指しましょう。
安部浩一
医療法人社団 仁明会 安部医院 院長
耳鳴りにより眠れないなどがある場合は、環境音楽などを聴くなどして、耳鳴りを気にしないように工夫しましょう。
まとめ
静かな場所で「シーン」と聞こえるなど、耳鳴りは誰にでも起こり得ることなので、日常生活に支障がなければ、過度に心配する必要はないケースが多いです。
ただし、片耳だけ「キーン」と耳鳴りがする場合など、なかには病気が隠れている可能性もあるため、症状が気になる際には医療機関を受診して適切な診断を受けましょう。
一時的に起こっている耳鳴りの場合には、自分で取り組める対策もあります。必要以上に耳鳴りを気にせず、ほかのことに意識を向けるようにしてみてください。
また、静かな場所で耳鳴りが気になる際には、自然音のようなBGMを流すのもおすすめです。音楽の音量に気を付けてストレスは溜めないなど、耳鳴りが起こりやすい環境を避ける工夫を行いましょう。