動画投稿サイトや音楽配信サービスの普及によって音楽の好みが多様化している昨今、どの時期でも安定した人気を得ているのが安眠用に制作された音楽です。
聴いているだけでリラックスできることから、安眠を求める多くの方から再生されています。
しかし、安眠用の音楽が本当に睡眠に効果があるのかどうか気になっている方も多いでしょう。この記事では安眠と音楽の関係性、安眠に効果のある音楽の種類を紹介します。
安眠と音楽の関係性
安眠をするためには、就寝前にできるだけリラックスして過ごすことが大切です。心身がリラックスできていれば入眠しやすくなり、心地良い睡眠をとることができます。
リラックスできる方法は数多くありますが、なかでも効果があるといわれているのが音楽鑑賞です。音楽を聴いて気持ちが落ち着くと、心身をリラックスした状態に導く副交感神経が活発となり、寝つきが良くなるといわれています。
ただし、曲のジャンルによっては、睡眠の妨げとなる可能性があるので注意してください。以下では、安眠に効果がある音楽の種類、安眠の妨げとなる可能性がある音楽の種類をそれぞれ紹介します。
高山哲朗
かなまち慈優クリニック 理事長
生命維持には交感神経、副交感神経からなる自律神経が大きく関与しています。副交感神経が優位になると筋肉の弛緩、脳がリラックスした状態となります。適した音楽を聴くと副交感神経が優位になると期待されるため、安眠につながります。
安眠効果に期待できる音楽の種類
まずは安眠効果に期待できる音楽の種類から紹介します。以下で紹介する音楽は動画投稿サイトや音楽配信サービスでも聴けるので、ぜひ探してみてください。
自然音が入った音楽
人はリラックスして眠りにつく時、脳波がα波に切り替わるといわれています。α波とは、気分の落ち着いた時に現れる波形のことです。このα波を出すには自然音の入った音楽を聴くのが効果的だと考えられており、寝る前に聴けば安眠効果に期待できます。
自然音の入った音楽と一口にいっても、雨や風、川のせせらぎなど数多くの種類があるので、自分好みの曲を探してみると良いでしょう。
クラシック
自然音だけだと物足りないと感じる方は、クラシックを聴くのがおすすめです。クラシックは心身にリラックス効果をもたらし、安眠にも効果があるといわれています。特にモーツァルトの曲は安眠効果があることで有名です。
安眠を妨げる可能性がある音楽の種類
聴く音楽の種類によっては、安眠の妨げとなる場合もあるので気をつけましょう。ここからは、安眠を妨げる可能性がある音楽の種類を紹介します。
歌詞がある音楽
安眠目的で音楽を聴くのなら、歌詞があるタイプの曲は避けましょう。歌詞が入っていると脳が言葉の意味を理解するために働いてしまい、眠気が飛んでしまう可能性があります。
また、歌詞によって感情が昂る場合もあり、安眠のために聴く音楽としては適しません。安眠をしたい方はクラシック、自然音の入った曲など歌詞がないタイプの音楽を流しましょう。
アップテンポな音楽
アップテンポな音楽を聴くと気分が高まる一方、リラックス状態からは離れてしまうので注意してください。就寝前に聴くと脳が覚醒し、眠りの妨げとなる可能性があります。安眠効果を求めるなら、スローテンポの音楽を選ぶようにしましょう。
高山哲朗
かなまち慈優クリニック 理事長
2021年のベイラー大学による睡眠時に音楽が及ぼす影響についての研究結果をもとに考えると、耳に残るフレーズがある曲も避ける方が良いようです。
安眠のために音楽を聴く際のポイント
安眠用の音楽は、下記の4つを意識したうえで聴きましょう。
- イヤホンやヘッドホンを長時間使わない
- タイマー機能を使って音楽を聴く
- 部屋の照明を暗くして聴く
- テンポやリズムが似ている音楽をリピートする
これらのポイントを押さえておけば、より健康的で高い安眠効果に期待できます。各ポイントの内容を以下で順番に見ていきましょう。
イヤホンやヘッドホンを長時間使わない
外部の音を遮断して曲に集中するために、イヤホンやヘッドホンを使っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、音楽鑑賞のためにイヤホンやヘッドホンを用いる場合は、長時間使わないように気をつけてください。
イヤホンやヘッドホンで大きな音を流し続けると、難聴になるリスクがあります。音量は上げすぎず、1時間程度聴いたら一度外して耳を休ませましょう。
高山哲朗
かなまち慈優クリニック 理事長
イヤホンにより大きな音量を聞き続けると、センサーとなる「有毛細胞」が障害を受け難聴になります。物理的に外耳道に傷がつき、海外では感電死の報告もあるようです。
また、寝る直前まで聴くことも安眠の観点からは推奨されません。リラックスできた時点で外すようにしましょう。
タイマー機能を使って音楽を聴く
安眠用の音楽を流していると、曲を止める前にいつの間にか眠ってしまうこともあるでしょう。しかし、睡眠中に音楽が流れ続けていると、音が原因で目が覚めてしまう可能性があるので注意してください。
音楽を聴く際は、曲を再生しているデバイスやアプリのタイマー機能を使い、眠るタイミングで自動的に音楽が止まるように設定することをおすすめします。
部屋の照明を暗くして聴く
安眠用の音楽は、部屋の照明を落とした状態で聴くのがおすすめです。部屋を暗くすると視覚から入ってくる情報量が減って曲に集中しやすくなり、より高いリラックス効果に期待できます。
また、照明を落としておけば、曲の再生中にそのまま眠ってしまっても部屋を暗くするために起きる必要がなくなります。
テンポやリズムが似ている音楽をリピートする
音楽が切り替わる際、テンポやリズムが大きく異なる曲が流れると、曲の変化に脳が反応して目が覚めてしまう可能性があります。安眠目的で音楽を聴くなら、似たようなリズムで同じくらいのテンポの曲をリピートすると良いでしょう。
音楽再生に使うデバイスやアプリに入っている曲のジャンルがバラバラな場合は、同じようなリズム・テンポの曲を探して安眠用のプレイリストを作っておくのがおすすめです。自分で曲を探す時間がない方は、音楽配信サービスで安眠用のプレイリストを流すのも良いかもしれません。
音楽鑑賞以外に睡眠の質を高める方法とは?
睡眠の質を高める方法は音楽鑑賞だけではありません。例えば、下記のような方法でも睡眠の質は高めることができます。
- 寝る前に軽くストレッチする
- 温かい飲み物を飲んで体温を上昇させる
- 夕食は就寝3時間前までに済ませる
- アロマを焚く
- 体に合った寝具を使う
音楽鑑賞と一緒にこれらの方法を実践すれば、より安眠しやすくなります。以下では各方法を紹介するので、ぜひ実践してみてください。
寝る前に軽くストレッチする
睡眠の質を高めるには、寝る前のストレッチが効果的です。ストレッチをすると体の緊張がほぐれ、より寝つきが良くなるといわれています。寝る前は、音楽鑑賞と併せて体を伸ばす癖をつけると良いでしょう。
ただし、激しく体を動かすと逆効果になる可能性があるので注意してください。睡眠の質を高める目的で体を動かすのなら、軽めのストレッチに留めましょう。
温かい飲み物を飲んで体温を上昇させる
人の体は、深部体温が低くなると眠気が訪れる仕組みになっています。この深部体温を就寝のタイミングで下げるには、寝る前に温かい飲み物を飲むのが効果的です。温かい飲み物を飲んで深部体温が上昇すると、その後体温が下がっていく際に眠気が訪れてくれます。
また、飲み物の種類は白湯やホットミルク、ホットココアなど、刺激が少なく飲んでいて落ち着けるものがおすすめです。聴き心地の良い曲を流しつつ、気持ちが落ち着く飲み物を飲めば、より高いリラックス効果に期待できます。
ただし、アルコールやカフェインが含まれている飲み物は、睡眠の妨げとなるので注意しましょう。例としては、お酒全般、コーヒー、エナジードリンク、煎茶などが挙げられます。
夕食は就寝3時間前までに済ませる
就寝直前に食事をすると、寝ている間に消化活動が行われる影響で休息をとっている脳が刺激されてしまいます。脳が刺激されると目が覚めやすくなる、眠りが浅くなるなど、睡眠に良くない影響が出る可能性があるので注意してください。
一般的に、消化活動にかかる時間は2時間〜3時間だといわれています。そのため、夕食は就寝3時間前までに済ませ、以降は食事しないよう心がけましょう。
アロマを焚く
就寝前はアロマを焚くのもおすすめです。アロマの香りに包まれながら心地良い音楽を聴けば、心身がよりリラックスできます。
アロマに詳しくない方は、この機会にお気に入りのアロマを探してみるのも良いでしょう。どのアロマが良いかよく分からない場合は、安眠用に販売されているアロマを選ぶのが無難です。
体に合った寝具を使う
睡眠の質を高めるには、寝具の高さや硬さなどが体に合っている製品を使うことが大切です。音楽鑑賞をして心身がリラックスできていても、使っている寝具が体に合っていないと寝にくさを感じてしまい、熟睡できない可能性があります。
横になった時に違和感や寝にくさを感じる方は、この機会に自分の体に合っている寝具を探してみると良いでしょう。
まとめ
就寝前に安眠用の音楽を流しながら過ごすと、心身がリラックスして寝つきが良くなります。安眠用の音楽は動画投稿サイトや音楽配信サービスで聴けるほか、安眠用のCDも販売されているので、この機会にお気に入りの曲を探してみてください。
また、音楽鑑賞と併せてアロマを炊いたりストレッチをしたりすると、より高いリラックス効果に期待できます。寝つきの悪さを感じている方は、ぜひ実践してみましょう。