睡眠中に「異常な発汗がある」「過呼吸が起こる」「金縛りが生じる」といった経験をした方、もしくは、現在も続いている方は、「睡眠時随伴症」の可能性があります。
睡眠中の過呼吸などの症状を「改善したい」と思っているものの、具体的にどうすれば良いのかが分からず悩んでいる方もいるでしょう。
そこで、この記事では、まず睡眠時随伴症について詳しく解説します。そのうえで、睡眠時随伴症が起こる原因や心身に及ぼす影響、対処法についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
睡眠時随伴症とは
睡眠時随伴症とは、睡眠中に発生する「寝ぼけた行動」や「望ましくない身体現象」の総称です。レム睡眠時に起こるケースや、ノンレム睡眠時に起こるケースなど、さまざまなパターンがあります。
以下は、レム睡眠に関連した睡眠時随伴症の例です。
- 悪夢障害(不快な夢を見るため、熟睡できない)
- 反復性孤発性睡眠麻痺(はんぷくせいこはつせいすいみんまひ=金縛り)
- レム睡眠行動障害(睡眠中、病的に体を動かしたり、叫んだり怒鳴ったりする)
ノンレム睡眠に関連した睡眠時随伴症の例を挙げると、以下のようになります。
- 錯乱性覚醒(寝ぼけ)
- 睡眠時驚愕症(恐怖を伴って、睡眠中に突然、叫び声を上げたり泣き出したりする)
- 睡眠時遊行症(寝床を出て歩き回ったり、走り出したりする)
なお、睡眠時遺尿症(おねしょ)も睡眠時随伴症の一種です。子供のおねしょに関しては、成長すると解消されるケースが多いです(成人まで持続する割合は1%程度)。
睡眠時随伴症が起こる原因
「子供」なのか「大人」なのかによって、睡眠時随伴症が起こる原因が異なります。以下、それぞれの場合について詳しく説明します。
子供の場合
子供は、「脳が発達段階であること」が原因で、睡眠時随伴症が起こりやすくなります。「遺伝的要因が関連している」「ADHDの場合、ノンレム睡眠に関連した睡眠時随伴症になるケースが多い」といった主旨の報告もあります。
なお、ノンレム睡眠に関連した覚醒障害は、小児期に発症することが多いものの、成長の過程で症状が消失する傾向が見受けられます。
大人の場合
大人の場合、以下に示すように、さまざまな原因が考えられます。
- 生活習慣の乱れ(睡眠不足、不規則な睡眠リズム)
- ストレス
- アルコール
- 薬の副作用
- 頭部の外傷
- 神経変性疾患、認知症
睡眠の質を悪化させる要因や健康の問題から、睡眠時随伴症が生じることを理解しておきましょう。
睡眠時随伴症が体や心に及ぼす影響
睡眠時随伴症の主な影響は、以下の3つです。
- 睡眠の質が低下する
- ほかの病気を引き起こす可能性がある
- 怪我をする場合がある
それぞれについて詳しく説明します。
睡眠の質が低下する
睡眠時随伴症によって睡眠の質が低下し、「授業中に居眠りしてしまう」「仕事中に眠くなる」など、日常生活に支障をきたす場合があります。
特に自動車の運転や機械の操作を行う業務に従事している方は、事故に結び付くリスクがあることにご留意ください。
ほかの病気を引き起こす可能性がある
例えば、「睡眠時遺尿症(おねしょ)」の場合、夜中に尿意を催して、目が覚め、排尿するためにトイレに行く回数が増加します。その結果、中途覚醒を主体とした不眠症が発症し、睡眠不足に陥る可能性があります。
怪我をする場合がある
「睡眠時遊行症(夢遊病)」の場合、無意識に(または、意識が朦朧としている状態で)立ち上がったり、歩き回ったりする症状が出現します。
ベッドから落ちたり、ものにぶつかったりして、怪我をする可能性があります。
睡眠時随伴症の対処法
睡眠時随伴症の主な対処法は、以下の3つです。
- 睡眠環境を整える
- 生活習慣を改善する
- ストレスを溜め込まない
それぞれについて詳しく説明します。
睡眠環境を整える
「睡眠時遊行症(夢遊病)」の場合、怪我をするリスクを軽減させるために、「ベッドの高さを低くする」「周囲に危険なものを置かないようにする」といった工夫をしましょう。
子供の場合は、親と同じ部屋で一緒に就寝させることもご検討ください。歩いている状況を見たら、起こさずに、静かに寄り添ってベッドに誘導することが大切です。無理に目を覚まそうとすると、混乱したり、癇癪を起こしたりする可能性があります。
生活習慣を改善する
睡眠時随伴症の改善には、睡眠不足を解消し、規則正しい睡眠リズムを保つことが重要です。夜更かしを避け、なるべく早寝早起きを心がけましょう。
昼夜逆転生活は避け、朝に起きた際に日光を浴びることがおすすめです。正しい生活リズムは正しい睡眠リズムに繋がり、睡眠不足を解消できます。
ストレスを溜め込まない
ストレスを抱えないことも大切です。例えば、以下に示すストレス解消法を試してはいかがでしょうか。
- 気分転換を行う(「散歩をする」「スポーツを楽しむ」「旅行をする」「読書をする」など)
- 信頼できる友人や家族に話を聞いてもらう
- 没頭できる趣味を持つ(「音楽」「ゲーム」「工作」など)
- 環境を変える(「転職する」「一人暮らしをはじめる」など)
これら以外にもさまざまなストレス解消法があるので、ご自身に適した方法を見つけてください。
気になる症状が続く場合は、医療機関の受診も検討しましょう
上述したように、子供の場合、睡眠時随伴症であったとしても、成長と共に消失する傾向が見られます。ただし、睡眠中の「おねしょ」「金縛り」「無意識な行動」などが、あまりにも気になるようであれば、医療機関を受診することもご検討ください。
大人の場合も、生活に支障をきたすレベルであれば、医師の診察を受けるほうが良いでしょう。病院によっては、睡眠関連疾患を専門とする医師いますので、専門家からのアドバイスをもらってはいかがでしょうか。
大西良佳
合同会社ウェルビーイング経営 代表
ノンレム睡眠行動障害に特異的な検査はありません。レム睡眠行動障害では睡眠ポリグラフ検査(レム睡眠中の過剰な運動を同定)で診断をします。どちらも環境調整を行ったうえで、必要に応じて薬物療法も行います。
まとめ
「睡眠時随伴症」とは睡眠障害の一種であり、睡眠中に発生する「寝ぼけた行動」や「望ましくない身体現象」の総称です。なお、子供か大人かで原因が異なり、子供の場合は成長と共に自然に改善される傾向があります。
睡眠時随伴症になると、睡眠の質が低下したり、ほかの病気を引き起こしたり、怪我をしたりする可能性があることにご留意ください。
「睡眠環境を整える」「生活習慣を改善する」「ストレスを解消する」といった対処法を試しても改善されない場合は、医療機関への相談を検討しましょう。