人間は食事をしてカロリーを摂取し、日々の生活の中で摂取したカロリーを消費していますが、睡眠中の消費カロリーについて疑問に思ったこともあるでしょう。また、睡眠不足が消費カロリーや摂取カロリーにどのような影響を与えるのかも、気になるところです。
この記事では、睡眠中でもカロリーは消費されるのか、睡眠不足とカロリーの関係、睡眠の質を高める方法などに関して説明します。
睡眠中でもカロリーは消費される
ずばり、睡眠中にも私たちの身体はカロリーを消費しています。
例えば体重50kgの20代前半女性の睡眠中の消費カロリーは約300Kcalといわれており、これは40分ほどランニングを行った場合と同等の消費カロリーです。
また、エネルギー消費量は入眠直後に急速に減少し、起きる直前に増加することも明らかになっています。
簑原沙和
医学博士、日本形成外科学会専門医
睡眠開始後のエネルギー代謝の変化は、運動および食事の熱産生の影響、睡眠の影響、睡眠欲求の減少、サーカディアンリズム等を反映していると考えられています。
睡眠不足とカロリーの関係
睡眠不足に陥った場合に、摂取カロリーや消費カロリーがどのように影響を受けるかに関して、以下で詳しく説明します。
睡眠不足だと摂取カロリーが増えやすい
睡眠不足に陥ると、レプチンと呼ばれるホルモンの分泌が減少します。レプチンには、満腹中枢を刺激して食欲を抑制する作用および、エネルギー消費を促進させる作用があります。
その一方で、食欲を高める効果を持つホルモンであるグレリンの分泌は増加します。さらに、グレリンの増加とレプチンの減少は、ともにオレキシンと呼ばれる神経ペプチドを増加させる効果があります。
グレリン同様オレキシンにも食欲を高める効果があり、グレリンとオレキシンによって食欲が高められることで、結果的に摂取カロリーが増加する可能性があります。
活動量の低下により消費カロリーが減少する
睡眠不足は日中の眠気や倦怠感・集中力の低下を引き起こすため、日中の活動量が減って消費カロリーの減少に繋がります。
睡眠不足は基礎代謝量も下げてしまうので、より、消費カロリーが減少することになります。
カロリーを消費するためには質の高い睡眠が重要
睡眠とカロリーには密接な関係がありますが、単に長時間眠れば良いというわけではありません。睡眠時間が長すぎると日中の活動時間が減ってしまうため、結果的に1日の合計カロリー消費量が減少する場合があります。
そのため、睡眠に関しては時間だけでなく質も意識しなければなりません。
質の高い睡眠をとることは、結果的に消費カロリーを増やすだけでなく、肥満や高血圧などの生活習慣病の予防効果もあります。
睡眠の質を高める方法
睡眠の質を高めるための方法は、主に以下のようなことが挙げられます。
- 規則正しい食生活を意識する
- 就寝前のアルコールやカフェインの摂取を控える
- 夕方から夜の運動を習慣づける
- 入浴は就寝の約90~120分前に済ませる
- 就寝前にアロマを焚いたり心地良い音楽を聴いたりしてリラックスする
- スマホやパソコンの使用は就寝2時間前までにとどめる
- 体に合った寝具を使う
それぞれの方法に関して、詳しく説明します。
規則正しい食生活を意識する
規則正しい食生活を心がけることは、睡眠の質を向上させるために効果的です。眠る直前に食事をすると、食べたものを消化するために胃腸が活発に動いているため、眠りにくくなるためです。
食べたものを胃腸が分解し終わるには、約2~3時間かかるといわれています。眠る時間から逆算し、夕食を食べ終える時間を決めると良いでしょう。
簑原沙和
医学博士、日本形成外科学会専門医
高炭水化物+低脂質食の組み合わせで、睡眠中のエネルギー消費量が高かったという報告や、高GI食の方が低GI食と比べて消灯から睡眠開始までの時間が有意に短くなったという報告があります。GIとは、食後の血糖値の上昇度を表す指標です。
就寝前のアルコールやカフェインの摂取を控える
アルコールは、神経に作用したり代謝によって尿意をもたらしたりする可能性があるので、睡眠前にお酒を飲むことは控えましょう。
また、カフェインには覚醒作用があるので、コーヒー・緑茶・チョコレートといったカフェインを含むものを摂取することも、就寝の3〜4時間前からは控えることが賢明です。
簑原沙和
医学博士、日本形成外科学会専門医
アルコールやカフェイン以外にも、喫煙は就眠困難、覚醒困難など不十分な休養・睡眠に関わるとされています。男性では悪夢や夢の阻害、女性では日中の眠気に関連しているとされます。
夕方から夜の運動を習慣づける
適度な運動を行うことも、睡眠の質を高めることに役立ちます。
運動を行うのにおすすめのタイミングは夕方で、望ましくないのは就寝前の激しい運動です。体に負担がかかって興奮状態になり、睡眠の質が低下してしまう可能性があります。
睡眠の質を高めるために、早足の散歩やランニング、ストレッチなどを夕方〜夜に行いましょう。また、適度な運動を習慣にすることも重要です。その日限りの運動では、睡眠の質を高められない場合があります。
入浴は就寝の約90~120分前に済ませる
眠る直前の入浴は、睡眠の質を高めるうえでは好ましくありません。そのため、就寝時間の約90~120分前に入浴することを意識すると良いでしょう。入浴時間は25~30分程度、お湯の温度は38℃程度のぬるめが理想的です。副交感神経優位の状態になるので、睡眠の質の向上に繋がります。
ただし、熱いお風呂に入ると交感神経が優位になって、反対に眠りにくくなってしまいます。特に睡眠の質を高めたい場合は、高すぎない温度設定を心がけましょう。
アロマを焚いたり心地良い音楽を聴いたりしてリラックスする
リラックスすることは、副交感神経を優位にするのに効果的なので、睡眠の質の向上が期待できます。
リラックス方法は、アロマを焚いたり好きな音楽を聴いたりなど人それぞれです。自分に合ったリラックス方法を試すと良いでしょう。
スマホやパソコンの使用は就寝2時間前までにとどめる
一般的に人には、「日光を浴びると覚醒し、夜になると眠くなる」という睡眠リズムがあります。これには「メラトニン」と呼ばれるホルモンが関係しており、メラトニンの分泌量が増えると眠気が生じます。
メラトニンは強い光を浴びると分泌量が減り、反対に暗いところにいると分泌量が増えるようになっているので、夜になると自然と眠くなります。
ただし、眠る直前にスマホやパソコンの画面を見ていると、その光によって脳が昼間であると錯覚し、メラトニンの分泌量が減少します。その結果、上手く寝付けなくなり睡眠の質が低下してしまいます。
そのため、眠る約2時間前からスマホやパソコンには触らないことが理想的です。
体に合った寝具を使う
睡眠環境を改善して体に合った寝具を使うことで、眠りの質を高められる可能性があります。現在使用しているものを一度見直し、より自分に合った寝具に変えることで熟睡しやすくなるかもしれません。
特に、寝具の硬さや体圧分散性は睡眠の質に大きく影響するので、それらの点を意識して寝具選びを行うことで、睡眠環境を効果的に改善できるでしょう。
まとめ
起きている間だけでなく、睡眠中にもカロリーは消費されます。睡眠不足に陥ると、ホルモンの作用による食欲増加や活動量低下に繋がる恐れ上がります。よって、日中の消費カロリー量が減少し、睡眠不足は肥満を招く可能性があります。
睡眠不足を解消することで、睡眠中および日中の正常なエネルギーの消費が保たれます。規則正しい食生活やリラックスした状態で眠りにつくことを意識しましょう。