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2025.03.21 更新

【医師監修】ショートスリーパーとは?特徴や健康・寿命への影響を解説

【医師監修】ショートスリーパーとは?特徴や健康・寿命への影響を解説

ショートスリーパーとは、睡眠時間が6時間未満でも、問題なく日常生活を過ごせる方のことを指します。

ショートスリーパーは、一般的に少ない睡眠時間でも日中の活動を有意義に行えますが、体や寿命への影響など、心配している方もいるのではないでしょうか。

この記事では、ショートスリーパーの定義や特徴、診断方法について詳しく解説します。ショートスリーパーについて理解したうえで、自分の睡眠状況に問題がないか、改めて確認しましょう。

  1. ショートスリーパーとは
  2. ショートスリーパーの特徴
  3. ロングスリーパーとの違い
  4. 歴史上の偉人にはショートスリーパーが多い?
  5. ショートスリーパーの診断方法
  6. ショートスリーパーと短時間睡眠の違い
  7. ショートスリーパーと病気・健康との関連性
  8. ショートスリーパーは不眠症や睡眠不足とは異なる
  9. ショートスリーパーは短命?寿命との関係性について
  10. ショートスリーパーになる方法はある?
  11. 無理にショートスリーパーを目指すとさまざまなリスクの懸念がある
  12. まとめ

ショートスリーパーとは

アメリカ国立睡眠財団が示す定義によると、ショートスリーパーに該当するのは「睡眠時間が6時間未満の方」です。一般的には、ショートスリーパーは睡眠時間が短いだけではなく、睡眠時間が短くても問題なく日常的な活動を行える方のことを指します。

「ショートスリーパーの日本人は多い」と耳にしたことがあるかもしれませんが、そういわれる理由として、各国と比較した時に日本人の睡眠時間が短いことが挙げられます。

日本人の睡眠時間を確認すると、厚生労働省が令和5年に行った調査によれば、男性の38.5%、女性の43.6%が睡眠時間が6時間未満であることがわかりました。睡眠時間のみで判断すれば、日本人の約40%がショートスリーパーに当てはまります。

しかし、詳細は次項で解説しますが、睡眠時間が6時間未満でもショートスリーパーではなく、実際には睡眠不足や睡眠障害の方も多くいると考えられます。

出典: 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要

ショートスリーパーの特徴

ショートスリーパーの特徴は、以下のとおりです。

  • 6時間未満の睡眠時間でも目覚まし時計なしで自然に目覚める
  • 起床後に眠気を感じず、昼寝やうたた寝をしない
  • 特定の遺伝子を持っている

ショートスリーパーは生まれつきの体質といわれており、睡眠時間が短くても日中に眠気を感じないため、活動的に過ごすことができます。

一方、日中に眠気を感じるうえに頭痛や集中力の欠如など、不調が伴うケースは睡眠不足や睡眠障害の可能性が高く、本来のショートスリーパーとは異なります。

日本人は6時間未満の睡眠時間の方が多いですが、本当の意味でのショートスリーパーの割合は少ないとされています。

豊田早苗

豊田早苗

とよだクリニック院長

睡眠に関与しているβ1アドレナリン受容体遺伝子の配列に変異があると、深い睡眠(ノンレム睡眠)から一気に覚醒することができ、覚醒状態を促進する脳神経細胞の数が多いことがわかっています。

この遺伝子変異があることがショートスリーパーになる要因であり、遺伝子変異がない方がネット上の情報に惑わされてショートスリーパーになることを目指しても、健康を害するだけで真のショートスリーパーになることはできないといわれています。

ロングスリーパーとの違い

ロングスリーパーとは、ショートスリーパーとは反対に睡眠時間が長い傾向にある方のことを指します。

明確な定義はないものの、睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)によると、「成人で10時間以上の睡眠時間が必要な方」をロングスリーパーとしています。

ロングスリーパーの方は長時間の睡眠が必要なため、日中に活動できる時間が制限されるケースもあり、時間を有効活用できないことから悩みを抱えている方も少なくありません。

また、ショートスリーパーにもロングスリーパーにも属さない「バリアブルスリーパー」という言葉もありますが、これは最適な睡眠時間が約6〜9時間ほどである方々のことを指します。

ショートスリーパーとロングスリーパーの中間に位置し、日本人の多くはこのタイプだといわれています。

歴史上の偉人にはショートスリーパーが多い?

歴史上の偉人には、ショートスリーパーが多いとされているエピソードがあります。ここではナポレオンエジソンの2人を紹介します。

フランスで革命を起こし、のちに皇帝となったことで有名なナポレオンは、睡眠時間が3時間だったといわれています。中には「ナポレオンは昼寝をしていたから3時間でも大丈夫だった」という説もありますが、それでもショートスリーパーだといえるでしょう。

また、発明王エジソンの睡眠時間は4〜5時間だったといわれています。エジソンは睡眠時間を時間の無駄と考えており、発明のために起きている時間を大切にしていたようです。

反対に、ロングスリーパーだったとされている偉人も存在します。天才物理学者として有名なアインシュタインは睡眠を重要視していたようで、毎日10時間睡眠をとっていたといわれています。

ただし、これらの人物は特殊な例であり、必要な睡眠時間は人によって異なります。あまり人と比べ過ぎず、自分に適した睡眠時間を確保しましょう。

ショートスリーパーの診断方法

自分がショートスリーパーなのか気になる方に向けて、ここではショートスリーパーの診断方法について解説します。

ショートスリーパーかどうかを明確に判断するには、医師の診断が必要です。一般的には診断に睡眠日誌を用いるケースが多いようです。

睡眠日誌には、以下の項目を記録します。

  • 寝床についた時刻
  • 入眠した時刻
  • 夜中に目が覚めた時刻
  • 夜中に目が覚めて起きていた時間
  • 朝起きた時刻
  • 昼寝をした時刻

睡眠日誌の記録結果から、1週間以上、6時間未満の睡眠が続いているのに昼間に眠気を感じない場合は、ショートスリーパーであると診断される可能性があります。

また、これに加えて健康上の問題がないこと、集中力の低下が見られないこともショートスリーパーと診断されるための重要なポイントです。

さらに、睡眠日誌から不健康な睡眠習慣が確認された場合、検査を追加で行う可能性もあります。追加の検査には、例えば総睡眠時間や覚醒時間などの状態を確認するための検査などがあります。

これらは、睡眠中に睡眠パターンを記録し、睡眠障害の兆しがないかを確認するための「ポリソムノグラフィー(睡眠検査)」や、手首や足首に「アクチグラフ」と呼ばれる装置を装着したうえで、検査を行います。

診断や検査の結果、昼間に眠気を感じたり、夜中に目が覚めたりすることが多い場合は、ショートスリーパーではなく睡眠に問題を抱えている可能性があります。

ショートスリーパーと短時間睡眠の違い

ショートスリーパーと似た言葉に「短時間睡眠」があります。両方とも睡眠時間が短い点が共通していますが、明確な違いもあります。

それぞれの特徴などについて、わかりやすく一覧表にまとめました。

比較項目ショートスリーパー短時間睡眠
睡眠時間6時間未満自分に必要な睡眠時間をとれていない
原因遺伝的なもの・寝る時間が遅い
・起床時間が早い
特徴・日中に眠くならない
・活動的
・日中に眠気がある
・休日の睡眠時間が長くなる

短時間睡眠とは、一定の睡眠時間より短いことが定義されているわけではなく、自分にとって必要なだけの睡眠がとれていない状態のことです。

ショートスリーパーは6時間未満の睡眠でも問題なく活動できますが、短時間睡眠の場合には、休日に長く眠って起きる時間が遅くなるなど、足りない睡眠時間の帳尻を合わせる傾向にあります。

ショートスリーパーと病気・健康との関連性

ショートスリーパーと病気・健康との関連性

ショートスリーパーは遺伝的に生じる特性であり、病気ではありません。遺伝子の影響で必要な睡眠時間がもともと短い傾向があり、睡眠時間が短くても睡眠不足にならないためです。

また、自分にとって必要な睡眠時間が確保できているため、健康にも害を及ぼさないと考えられています。

ショートスリーパーは不眠症や睡眠不足とは異なる

ショートスリーパーと関連する睡眠用語に、「不眠症」や「睡眠不足」があります。ショートスリーパーと違い、これらに当てはまる人は短い睡眠によって心身へ影響が発生してしまう可能性があります。

不眠症とは、1ヶ月以上の長期間にわたって睡眠トラブルが続く病気のことです。ストレスや心身の病気、生活リズムの乱れ、服薬などの影響を受けて発症し、集中力や意欲の低下などの不調があらわれます。

具体的には不眠症は4つのタイプに分けられ、それぞれの特徴は以下のとおりです。

  • 入眠障害:寝付きが悪く、すぐに眠れない
  • 中途覚醒:眠りが浅く、就寝中に何度も目覚める
  • 早朝覚醒:早朝に目覚め、ふたたび眠れない
  • 熟眠障害:熟睡したという満足感が得られない

睡眠不足は、自分にとって必要なだけの睡眠時間がとれていない状態を指し、病気ではありません。しかし、睡眠不足の状態が続くと、日中の眠気や頭痛、倦怠感、吐き気、めまいといった体の不調があらわれます。

睡眠不足の方のなかには、睡眠時間を確保しているにも関わらず、睡眠の質が低く睡眠不足に陥っているケースもあります。平日に必要な分の睡眠をとれず休日に長時間の睡眠をとる方も多いです。

不眠症や睡眠不足については、以下の記事でそれぞれ詳しく紹介しています。睡眠トラブルが続いている方や睡眠不足でつらい方は、ぜひ参考にしてください。

不眠症
【医師監修】不眠症には種類がたくさんある?診断基準や原因を種類ごとに解説
睡眠不足 影響
【医師監修】睡眠不足がもたらす影響とは?正しい対処法も紹介

ショートスリーパーは短命?寿命との関係性について

厚生労働省の調査によると、睡眠は短すぎても長すぎても病気を発症するリスクが高いことがわかっています。

睡眠基準改定検討会の「睡眠に関する施策的背景」によると、睡眠時間が長い方は脳卒中、睡眠時間が短い方は、特に女性の場合狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患の発症リスクが高まります(※1)。

さらに、国立がん研究センターと健康研究センターの調査では、睡眠時間を7時間確保している方が最も死亡リスクが低いことも判明しており(※2)、これらの調査結果を踏まえると、睡眠時間と死亡リスクには因果関係があるといえるでしょう。

ただし、生まれつき長時間の睡眠を必要としないショートスリーパーの方々は、その限りではないと考えられています。

睡眠時間が6時間未満という短さであっても、その方にとっては十分な睡眠時間であることから、健康や寿命への影響はないとされています。

(※1)出典:睡眠基準改定検討会「睡眠に関する施策的背景
(※2)出典:国立研究開発法人 国立がん研究センター「多目的コホート研究(JPHC Study)睡眠時間と死亡リスクとの関連について

豊田早苗

豊田早苗

とよだクリニック院長

一般的に健康維持のために必要な睡眠時間は6~7時間といわれていますが、実際は、人によって必要な睡眠時間は違います。そのため、睡眠時間にこだわらず、日中に眠気が起こらなければ十分な睡眠が確保できていると考えて良いです。

また、睡眠は時間だけでなく質も重要です。時間にばかり目を向けるのではなく、朝起きた時に疲れが取れているか?スッキリ感があるか?など、睡眠の質(睡眠の深さ)も考えることが大切です。

ショートスリーパーになる方法はある?

「訓練を行うことで誰もがショートスリーパーになれる」とする意見もありますが、その言葉に科学的な根拠はありません。

ショートスリーパーは単純に睡眠時間が短いだけでなく、自分にとって必要な時間の睡眠を確保できていることや、日中の活動に支障が出ないといった特徴があります。

自分の意思だけで解決できるものではないため、自ら望んでショートスリーパーになるのは難しいといえるでしょう。

また、ショートスリーパーではない方が睡眠時間を短くすると、将来的に日中の活動や健康状態に影響が出ることが懸念されるため、無理に睡眠時間を短縮することはおすすめできません。

無理にショートスリーパーを目指すとさまざまなリスクの懸念がある

ショートスリーパーは、自分の意思でなれるわけではないため、無理にショートスリーパーを目指さず、最適な睡眠時間を知ることが大切です。

日本人の平均睡眠時間は6時間以上7時間未満の割合が最も多いとされていますが、睡眠時間は個人差があります。

そのため、ショートスリーパーのように6時間未満の睡眠で問題ない方もいれば、ロングスリーパーのように10時間以上の睡眠が必要な方もいます。

無理に睡眠を削った場合、以下のようなリスクが発生しうるため注意してください。

  • 注意力の低下
  • 記憶力の低下
  • 意欲の低下
  • 免疫力の低下
  • 肥満
  • 気分障害・生活習慣病のリスク増加

睡眠不足は注意力が低下するだけでなく、記憶力や学習力の低下に繋がるため、仕事や学業にも影響が生じる可能性があります。

また、睡眠不足による食欲ホルモンの乱れによって、肥満になりやすいとされているほか、うつ病などの気分障害や、糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクも高くなります。

睡眠不足は健康面にも大きな影響を与える可能性があるため、自分にとって最適な睡眠時間と質の高い睡眠を心がけましょう。

睡眠時間 理想
【医師監修】理想の睡眠時間はどのくらい?短すぎることによるリスクも解説

まとめ

この記事では、ショートスリーパーの定義や特徴、診断方法について解説しました。日中の活動時間を有効に使えるため、ショートスリーパーに憧れる方も多いでしょう。

しかし、ショートスリーパーは遺伝的な要素が関連する症状なので、トレーニングを行うことで誰もがなれるものではありません。

睡眠時間は短すぎても長すぎても健康へのリスクが高まるため、自分にとって必要なだけの睡眠時間をきちんと確保するよう努めてください。

日中のパフォーマンスを高めて毎日を快適に過ごしたい方は、まずは日々の過ごし方を見直すことをおすすめします。

健康的な生活を送ることで睡眠の質を高め、意欲的な毎日を過ごせるよう心がけましょう。

豊田早苗

豊田早苗

とよだクリニック院長

ショートスリーパーは、単に睡眠時間が短いだけでなく、睡眠時間が短くても日中に眠気を感じたり、仕事のパフォーマンスが落ちたり、心身の不調が生じたりすることはありません。

もし日中に眠気を感じたり、体のだるさや頭痛、イライラしやすいなどの心身の不調が起こったりする場合は、ショートスリーパーではなく単なる睡眠不足と考えましょう。

この記事の監修者
豊田早苗
豊田早苗とよだクリニック院長
鳥取大学卒業後、JA厚生連に勤務し、総合診療医として医療機関の少ない過疎地等に暮らす住民の健康をサポート。2005年とよだクリニックを開業し院長に。患者さんに寄り添い、じっくりと話を聞きながら、患者さん1人1人に合わせた診療を行っている。
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