坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)は、臀部から下肢にかけて痛みやしびれが続くような症状です。睡眠時に、坐骨神経痛の症状に悩まされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
坐骨神経痛の症状のせいで、毎晩十分な睡眠がとれない方は、対処法を実践したり寝方を少し工夫したりすることで、症状を紛らわせるかもしれません。
この記事では、坐骨神経痛の症状や、症状がつらい場合の対処法を説明します。おすすめの寝方なども紹介するので、坐骨神経痛でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
坐骨神経痛の症状
坐骨神経痛は、臀部(でんぶ)から下肢にかけて痛みやしびれが続くような症状のことを指します。
痛む部位などには個人差があり、症状としては主に以下のようなものが挙げられます。
- 長時間立っていると、立っていられないほどの脚の痛みに襲われる
- 臀部の痛みが強く、座り続けることが困難
- 腰を反らした時、脚に痛みやしびれを感じる
- 安静にしていても、臀部や脚が激しく痛んで眠れない
- 体を折り曲げた時に臀部や下肢の痛みが強くなる
また、「チクチク」「ズキズキ」など、痛みの感じ方も人それぞれです。
睡眠時に坐骨神経痛を発症する原因
坐骨神経痛の主な原因として考えられるものが以下の2つです。
- 腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア
- 腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)
腰椎椎間板ヘルニアは、脊椎(背骨)の間で、クッションの役目をしている「椎間板」が突出して神経を圧迫し、痛みやしびれに繋がる症状のことです。座っている時に痛みが強くなることが多く、くしゃみや咳をすると激しい痛みを伴うことがあります。
腰部脊柱管狭窄症は、脊髄神経が収まっている脊柱管が狭まることによって、神経が圧迫されることで生じる症状です。長時間立っていたり、長距離を歩いたりすると痛みが出やすいといわれています。
これらのほかにもさまざまな要因があり、年齢によっても原因が異なります。
睡眠時の坐骨神経痛がつらい場合の対処法
以下は、「坐骨神経痛がつらくて眠れない」「坐骨神経痛により何度も目が覚めてしまう」という場合の対処法です。
- アイシングで炎症を鎮める
- シップを貼る
- 痛み止めの薬を飲む
ここからは、それぞれの対処法について詳しく説明します。
紹介する内容はあくまで応急処置としての対処法であるため、症状が気になる場合はなるべく早く医療機関を受診しましょう。
アイシングで炎症を鎮める
炎症がある場合、温めると坐骨神経痛の症状が強くなる場合があります。
痛みが出たら、まずは炎症を鎮めるためにアイシングを行うことがおすすめです。
シップを貼る
アイシングで患部を冷やしたらシップを貼りましょう。
前述したように温めると痛みが強くなる可能性があるので、冷タイプのシップを使用することがおすすめです。
寝ている間に症状が治まることもあります。
痛み止めの薬を飲む
眠れないほどの痛みがある場合、炎症を抑える痛み止めの薬などを飲むことも効果的です。
まずは薬剤師に相談のうえで購入、服用しましょう。痛み止めの薬を寝る前に飲めば、症状が出たタイミングで薬が効いてくることもあります。
ただし、痛み止めが必要なほどの痛みがある場合は、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。
睡眠時の坐骨神経痛がつらい人におすすめの寝方
睡眠時に少しでも坐骨神経痛を和らげたい場合におすすめの睡眠方法(寝方)を、以下の場合に分けて紹介します。
- 仰向け寝の場合
- 横向き寝の場合
- 抱き枕を使う場合
少しでも楽に寝るための参考にしてください。
仰向け寝の場合
仰向け寝の場合には、膝を立てた姿勢で寝ることがおすすめです。膝を伸ばすと、腰など症状の出やすい部分に、負担がかかってしまいます。
もし膝を立てた際に、膝裏の空間が気になる場合は、膝裏にクッションを置いたり、ふくらはぎの下に厚めの座布団を敷いたりすることも良いでしょう。
長田夏哉
田園調布 長田整形外科 院長
腰部脊柱管狭窄症による坐骨神経痛の場合は、仰向けで寝ることで痛みが増すこともあります。また、仰向けで寝る場合、睡眠時無呼吸症候群が疑われる人には気道が狭くなりやすいので注意しましょう。
横向き寝の場合
横向き寝の場合には、膝を曲げて背中を丸めるような姿勢になることがポイントです。
そして、幅10cmほどに畳んだタオルを腰のくびれ辺りに置いて寝てみましょう。タオルが腰椎を支えてくれます。
また、寝返りなどでタオルの位置がずれて困るという場合は、腹巻きの中にタオルを入れると固定されるのでストレスを感じにくいでしょう。
抱き枕を使う場合
抱き枕は、横向き寝の場合に使うことがおすすめです。
抱き枕に体重をのせて寝ることで痛みの出やすい腰への負担を和らげられる場合があります。
痛みが出ている部位が左側、右側のどちらかに偏っている場合、痛みのあるほうを上にして寝るとより効果的です。
睡眠時の坐骨神経痛がつらい場合に推奨できない寝方
坐骨神経痛がつらい場合、腰が反る姿勢のうつ伏せ寝は避けましょう。腰が後ろに反る「反り腰」は筋肉の張りを強め、神経を圧迫し坐骨神経痛を悪化させる可能性があります。
また、仰向け寝でも坐骨神経痛が悪化する場合は、普段から「反り腰」の可能性があります。仰向けに寝た時に腰の下に手が入るスペースがある場合は反り腰の可能性が高いため、腰に負担をかけない横向き寝で寝てください。
日常生活で坐骨神経痛の症状を緩和させる方法
坐骨神経痛による痛みに悩まされているのであれば、睡眠時に対処法を実践すると同時に、普段の行動や意識を変えるように意識することも大切です。
以下は、日常生活で坐骨神経痛の症状を緩和させる方法です。
- 股関節のストレッチをする
- 正しい姿勢(S字カーブ)を意識する
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
股関節のストレッチをする
坐骨神経痛の症状を和らげるには、筋肉のこわばりを解消させることが大切です。無理のないストレッチを行い、筋肉をほぐしてあげましょう。
筋肉のこわばりは、長時間のパソコン作業や立ち仕事が原因と考えられます。
こわばりが気になった段階で股関節を中心としたストレッチを行えば、症状を和らげられるでしょう。
また、お風呂上りは血行が良く、体の筋肉もほぐれている状態であるため、ストレッチにおすすめのタイミングです。
長田夏哉
田園調布 長田整形外科 院長
坐骨神経痛を引き起こす原因それぞれに適したストレッチがあります。病態によって効果はさまざまなので、病状をみながら継続・中止の判断を行うことが大切です。
正しい姿勢(S字カーブ)を意識する
立っている時の理想的な姿勢は、横から見た時に背骨が自然なS字カーブを保った状態といわれています。S字カーブが崩れていると、腰あたりに負担がかかるため注意が必要です。
自分の姿勢を確認して、常に正しい姿勢をキープできるよう意識しましょう。
理想的な姿勢をキープする寝具について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
まとめ
坐骨神経痛は臀部から下肢にかけての痛みやしびれが主な症状です。痛みやしびれのために十分な睡眠がとれない場合もあります。
この記事では、一時的に痛みを緩和させる対処法や痛みがつらい時の睡眠方法などを紹介しました。
痛みを和らげるためには、睡眠方法だけでなく、日頃からストレッチや姿勢の見直しを心がけることも重要です。また、痛みが気になる場合は、なるべく早く医療機関を受診することも大切です。
長田夏哉
田園調布 長田整形外科 院長
痛みによって眠れない場合、基本的には整形外科を受診しましょう。ただし内科や泌尿器科、婦人科疾患の場合や緊急性の高い病状の場合もありますので、さまざまな専門科で対応可能な医療機関(総合病院など)をおすすめします。