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2023.03.14 更新

【医師監修】眠いのは更年期が原因かも?女性が抱える睡眠トラブルについて調査

【医師監修】眠いのは更年期が原因かも?女性が抱える睡眠トラブルについて調査

更年期を迎えてから「眠い」と感じやすくなった女性の方も多いのではないでしょうか。

更年期を迎えると、体調面にさまざまな変化が訪れます。眠気や不眠など、睡眠に関するトラブルもそのなかの一つです。

この記事では、更年期に眠気をはじめとするさまざまな症状が起こる理由についてわかりやすく解説します。

更年期による眠気がつらい時の具体的な改善方法もまとめているので、ぜひ参考にしてください。

  1. 更年期の女性は睡眠トラブルを抱えやすい
  2. 心身にあらわれる更年期の症状について
  3. 更年期に眠いと感じる4つの原因
  4. 女性ホルモンが減少する
  5. 更年期特有の症状が気になる
  6. 精神的な負担を感じる
  7. 加齢によって睡眠時間が短くなる
  8. 更年期で眠い時におすすめしたい眠気の改善方法
  9. 栄養バランスの良い食事を心がける
  10. 生活習慣を改善させる
  11. 就寝環境を整える
  12. 更年期の終わりのサインはある?
  13. つらい時は医療機関を受診してホルモン治療や漢方を検討しよう
  14. まとめ

更年期の女性は睡眠トラブルを抱えやすい

更年期とは、閉経前後の5年、合わせて10年の期間のことです。

閉経とは、月経が永久に停止することで、1年間無月経の状態が続くことから判断します。個人差はあるものの、閉経は45〜55歳ごろに訪れるのが一般的です。

更年期に起こるさまざまな体の変化のきっかけとなるのが、閉経による女性ホルモンの減少です。卵巣の機能が低下することによってホルモンバランスが乱れ、体の不調を感じる女性が増加します。

睡眠トラブルも、更年期を迎える多くの女性が悩む問題です。

厚生労働省が示す「2017年3月の国民健康・栄養調査」によると、更年期にあたる40代から50代の女性の睡眠時間は、全体の睡眠時間の平均よりも短い5時間以上6時間未満が最も多くなっています。

また、「睡眠時間が足りなかった」と答えた方が約25%、「日中に眠気を感じた」と答えた方が約40%にも上りました。

山下あきこ

山下あきこ

株式会社マインドフルヘルス 代表取締役

更年期の症状で医療機関を受診する方の50%強が睡眠トラブルを抱えています。

心身にあらわれる更年期の症状について

更年期に起こるさまざまな不調を「更年期症状」と呼び、症状が重く日常生活に支障をきたす場合には「更年期障害」の診断のもとに治療を行う場合もあります。

更年期にあらわれる不調は、身体面なものだけではありません。更年期は精神面にも影響を与えるとされており、具体的な症状として以下のものが挙げられます。

  • 身体的症状:ホットフラッシュ、発汗、動悸、頭痛、肩こり、疲れやすい、吐き気、関節痛、しびれ、尿もれ
  • 精神的症状:うつ、イライラ感、不安感、気分の落ち込み、意欲の低下、情緒不安定、不眠、頭痛、めまい

ホットフラッシュとは、発汗を伴うほてりがしばらく持続する症状で、女性の6割が経験するとされています。

身体的症状としては、肩こりや疲れやすさ、頭痛といった不調を感じやすく、更年期を迎えることで精神的に不安定になる女性も多いようです。

更年期に眠いと感じる4つの原因

更年期の体にはさまざまな変化が起こりますが、「なかなか眠れない」「眠りが浅い」などの睡眠面の問題もその一つです。更年期に眠気を感じる原因として、以下のことが考えられます。

  1. 女性ホルモンが減少する
  2. 更年期特有の症状が気になる
  3. 精神的な負担を感じる
  4. 加齢によって睡眠時間が短くなる

ここからは、上記の項目ごとに詳細を解説します。

女性ホルモンが減少する

睡眠トラブルが起こりやすくなる原因の一つに、女性ホルモンの減少が挙げられます。

女性ホルモンには「エストロゲン」「プロゲステロン」の2種類があり、これらは睡眠と密接に関わっています。

エストロゲンは自律神経の働きを安定させて自然な眠りを誘い、プロゲステロンは体温を上げて眠気を強くする働きを持つホルモンです。

エストロゲンとプロゲステロンの分泌量は、「性成熟期」と呼ばれる10代後半から40代半ば頃にかけては安定していますが、更年期を迎えると急激に減少します。

そのことから、更年期を迎えると睡眠トラブルが増えやすい傾向にあるのです。

また、生理前から生理中にかけて強い眠気を感じる症状も、女性ホルモンの分泌量が多くなることが関係しています。

更年期特有の症状が気になる

更年期には、ほてりや発汗をはじめとする不快な症状が起こりやすくなります。

複数の症状があらわれる方も多く、「頭が痛い」「汗を大量にかく」などの不快感が生じることで、熟睡しづらくなってしまうのです。

更年期の症状による不快感が眠りの質を低下させるだけでなく、「今日も症状があらわれたらどうしよう」といった不安感を抱えてしまうことも、なかなか眠れなくなる原因といえます。

精神的な負担を感じる

更年期の症状として、不安や抑うつ感といった精神症状があらわれるケースも多いです。

人生において、40〜50代あたりの時期には多くの変化が訪れるため、特に影響を受けやすいと考えられます。

例えば、子どもの成長や独立、夫婦関係の変化、身体的な不調が増えるなど、さまざまな出来事があるでしょう。

これらの要因と更年期とが重なって精神的な不調に繋がり、睡眠トラブルが生じやすくなります。

加齢によって睡眠時間が短くなる

「年齢を重ねると自然と睡眠時間が短くなる」という噂を耳にしたことがある方は多いかもしれません。

厚生労働省が発表した「健康づくりのための睡眠指針2014」によると、10代前半の睡眠時間の平均は8時間以上ですが、その後は加齢に応じてどんどん短くなっていき、65歳では約6時間となります。

そもそも年齢を重ねることで睡眠時間が短くなるのは「更年期だから」というわけではなく、加齢による自然な変化です。

一般的な睡眠時間は6~8時間とされているため、それを目安にすると良いでしょう。

また、夜の時間帯に眠れず日中に眠気が残ってしまうのであれば、眠くなりやすい昼食後に仮眠をとるのもおすすめです。

更年期で眠い時におすすめしたい眠気の改善方法

更年期で眠い時におすすめしたい眠気の改善方法

更年期症状や更年期障害は避けられないものですが、眠気を改善するために日常生活で行えることは多々あります。

  • 栄養バランスの良い食事を心がける
  • 生活習慣を改善させる
  • 就寝環境を整える

すぐに始められるうえ、睡眠以外にも良い影響を与えることばかりなので、ぜひできることから試してください。

栄養バランスの良い食事を心がける

心身の健康を保つためにも、バランスのとれた食生活を心がけましょう。

主食・副菜・主菜の割合を意識して、摂取する栄養が偏らないようにすることが大切です。

和食は炭水化物やタンパク質、脂質、ビタミンなどの各種栄養素をバランスよく摂取できるため、積極的に取り入れましょう。

女性ホルモンと似たはたらきを持つ「大豆イソフラボン」を豊富に含んでいる大豆製品もおすすめです。

また、就寝直前に食事をとると、消化活動が優先されて入眠しづらくなるため、夕食は就寝の約3時間前までに済ませるようにしてください。

同時に、覚醒作用を含むアルコールやカフェイン、ニコチンの摂取は、就寝前には避けることが望ましいです。

生活習慣を改善させる

体内時計を調整する機能は、加齢とともに衰えていきます。

体内時計がずれた状態では眠りが浅くなりやすく、日々の生活にも影響が出る可能性があるため、生活習慣の改善を図って睡眠の質を高めましょう。

具体的に、起床時刻や就寝時刻がバラバラだと体内時計のずれに繋がるため、毎日できるだけ同じ時刻に起床・就寝することをおすすめします。

朝日を浴びることには体内時計をリセットする働きがあるので、起床後はカーテンを開けて意識的に日光を浴びてください。

さらに、ブルーライトの影響でも体内時計にずれが生じるため、スマホやパソコンは就寝前の使用は控えてください。

日中に運動を行うことで疲労が溜まると入眠しやすくなります。運動はストレス解消にも効果的なので、散歩やランニングなど、軽い有酸素運動を取り入れると良いです。

就寝時刻あたりに体温を下げて入眠しやすくするためにも、入浴は就寝90~120分前に済ませましょう。

38℃くらいのぬるめのお湯で25分〜30分程度が、理想的な入浴時間の目安となります。

また、「就寝前に温かい飲み物を飲む」「ストレッチをする」などして、心身ともにリラックスできる時間を作ることも大切です。

就寝環境を整える

「現在使用している枕やマットレスが自分に合っているか」「寝姿勢を正しく保てているか」を確認しましょう。

体に合う寝具に買い替えることで寝心地良く感じるようになれば、入眠しやすくなり睡眠の質が向上する可能性があります。

また、寝具だけでなく就寝する部屋の環境も整えなくてはなりません。

明るすぎる照明は体内時計がずれる原因となるため、寝室には暖色系の照明を取り入れることをおすすめします。就寝する部屋の室温は、夏場は25℃〜26℃、冬場は22℃〜23℃を目安とし、湿度は通年40%〜60%を保てている状態が理想的です。

更年期の終わりのサインはある?

閉経から5年ほどが経過すると、「更年期」自体は終わりを迎えます。この時期になると、更年期障害による諸症状も軽くなる傾向があり、更年期による不快な症状に悩むことも少なくなっていくでしょう。

更年期には明確な終わりのサインがあるわけではなく、徐々に症状が軽くなっていき、気付いたら終わっているケースが多いです。そのため、更年期のさまざまな症状に悩むのは、長くても10年程度と考えられます。

山下あきこ

山下あきこ

株式会社マインドフルヘルス 代表取締役

更年期が終わりかけの頃から夜中に目が覚めやすくなり、そのせいで昼間の眠気が強くなりやすいです。また、更年期が終わった後の方が、閉経前より睡眠障害の割合が高くなっています。

つらい時は医療機関を受診してホルモン治療や漢方を検討しよう

更年期の諸症状は、経験した人にしか分からないつらいものです。そのうち治まるからといって我慢せず、あまりにも症状がつらい時には医師に相談しましょう。

医療機関では、以下のような治療が行われています。ただし、これらはあくまでも一般的に行われる治療の概要であり、具体的な治療方法は医師と相談したうえで決めるものであることを押さえておきましょう。

  • 漢方
  • ホルモン補充療法(HRT)
  • 向精神薬

漢方では、更年期によく見られる冷え性・疲れやすさ・不安・不眠などの改善が期待できるとされています。

ホルモン補充治療法(HRT)は、更年期に減少するエストロゲンや黄体ホルモンを補充する治療法です。特にホットフラッシュや発汗など、血管の拡張に関連する症状に対応しており、投与方法の選択肢も豊富にあります。

向精神薬は、更年期の症状のなかでも、特に不安感や落ち込みなどの精神症状が強く出ている場合に用いますが、薬によっては発汗やほてりに効果を発揮するものもあります。

特につらい症状や、どのように改善させたいかを医師に相談し、少しでも更年期の症状を和らげられる治療方法を見つけましょう。

山下あきこ

山下あきこ

株式会社マインドフルヘルス 代表取締役

漢方薬は、漢方専門医の診察を受けて体質にあった漢方を服用しましょう。自己判断は症状を悪化させることがあります。
女性ホルモン療法は癌のリスクを恐れる方がいますが、適切に使えばリスクは低いため、興味があれば医師に相談しましょう。

まとめ

更年期の女性には、ほてりや頭痛などさまざまな形で不調があらわれます。睡眠に関するトラブルも更年期の症状の一つであり、多くの女性が悩んでいる問題です。

更年期は歳を重ねていくうえで避けられないことではありますが、生活習慣を見直して睡眠の質が高まれば、眠気の解消に繋がる可能性もあります。

更年期による眠気で悩んでいる方は、食生活の改善や寝具の見直しなど、身近なことから少しずつ見直してみてはいかがでしょうか。

あまりにも症状がつらい場合には必要に応じて医療機関を受診し、医師の診断のもとに漢方をはじめとした治療に取り組んでも良いでしょう。

この記事の監修者
山下あきこ
山下あきこ株式会社マインドフルヘルス 代表取締役
医学博士、内科医、神経内科専門医、抗加齢医学専門医。 1974年佐賀県生まれ。1999年川崎医科大学卒業、2001年~福岡大学病院脳神経内科勤務、2005年~フロリダ州メイヨークリニックジャクソンビル神経内科留学、2007年~佐賀県如水会今村病院神経内科医長などを経て、病気を治すより、人々が健康づくりを楽しむ社会を目指し、2016年に株式会社マインドフルヘルスを設立。アンチエイジング医学、脳科学、マインドフルネス、コーチングを取り入れたセミナー、企業研修、個人健康コンサルティング等を行っている。自分自身の習慣作りと人に伝える活動ができるマインドフル・ライフコーチの講座が好評。「ZIP!」「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)など、メディア出演も多い。著書:「やせる呼吸」(二見書房 (2018/6/26))、「こうすれば、夜中に目覚めずぐっすり眠れる:医師が教える、薬に頼らない3つの方法」(共栄書房 (2022/7/11))、「賢い食べ方」(あさ出版(2022/10/14))
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