「よく夢を見る」と感じている方の中には、「眠りが浅い場合に夢を見る」と聞いたことがある方がいるかもしれません。
夢を見る理由のすべては解明されていませんが、睡眠の質に関連している可能性があるといわれています。
「眠りが浅く夢を見やすい」という悩みがある方は、日々の習慣を見直すことで上手く入眠できるようになり、睡眠の質の向上が期待できるかもしれません。
この記事では、よく夢を見る理由や眠りの質との関係性、毎日夢を見る人の特徴などを解説します。睡眠の質を高める方法も紹介しているため、「寝てもスッキリしない」「眠りの質を良くしたい」と考えている方は、ぜひ参考にしてください。
よく夢を見るのは眠りが浅いことと関係がある
夢をたくさん見る方は、眠りが浅い可能性があるといわれています。
一般的に睡眠は、深い睡眠である「ノンレム睡眠」と浅い睡眠である「レム睡眠」に分けられており、夢を見ているのは主にレム睡眠の時です。
レム睡眠中はほとんどの方が夢を見ていますが、目が覚めないまま次のノンレム睡眠に進むため、大抵、夢の内容は忘れてしまいます。ただし、あまりにも夢を見るのであれば、レム睡眠中に繰り返し目が覚めてしまうことで夢を記憶してしまっている可能性があります。
また、あまり熟睡感が得られず、日中のパフォーマンスに影響がある場合も、レム睡眠が分断されて眠りが浅くなっているのかもしれません。
渥美正彦
医療法人上島医院院長
レム睡眠の時に夢を見ることが多いのは、ノンレム睡眠で見る夢は光や図形などの印象に残らない内容であることが多く、レム睡眠で見る現実感のある夢だけを「夢」として記憶しているためではないかと考えられています。
夢を見る理由やメカニズムについて
レム睡眠は、体は動きませんが脳は活動的な状態で、ノンレム睡眠は主に脳が休んでいる状態です。
ノンレム睡眠とレム睡眠は約90分前後の周期で繰り返され、朝が近づくごとに周期が短くなりレム睡眠が増えていきます。
人は寝ている時に情報を整理して記憶の定着を行いますが、そのためにはノンレム睡眠とレム睡眠の両方が必要だとされています。レム睡眠の時に記憶を脳に固定して、ノンレム睡眠の時に過去の記憶を結合するという流れです。
こうした情報の処理や記憶の整理を行う流れの中であらわれる現象が、夢として出てくるのではないかと考えられています。
渥美正彦
医療法人上島医院院長
就寝中に悪夢を見ることがありますが、悪夢の原因や睡眠への影響はよくわかっていません。しかし、大人よりも子供に多く、強いストレスやメンタル疾患があると悪夢の頻度が増えるという報告があります。
浅い眠りに繋がる原因や考えられる影響
浅い眠りに繋がる原因として、主に以下のことが考えられます。
- 喫煙や飲酒
- 明るい画面から発せられるブルーライト
- ストレス
- 就寝環境
それぞれについて詳しく説明します。
喫煙や飲酒
タバコに含まれるニコチンには覚醒作用があります。そのため、就寝前に喫煙をすると、眠りにくくなってしまうのでご注意ください。
ニコチンの体内における半減期は約2時間といわれているため、睡眠に影響を与えないためにも、就寝の数時間前から喫煙を控えたほうがいいでしょう。また、アルコールを摂取すると、交感神経の活発化により睡眠の質が低下して中途覚醒が増加します。多量のアルコールを摂取すると、アルコールの鎮静効果により意識障害を起こす可能性があります。
さらに、筋肉の弛緩作用もあり、舌の筋肉が緩んで気道が圧迫されるため、酸素が充分に供給されなくなって眠りが浅くなり、中途覚醒が増加してしまいます。
そのほか、アルコールには「抗利尿ホルモン」をブロックする働きもあるため、睡眠中に膀胱に尿が貯まりやすくなり、尿意で目覚めてしまう場合もあります。
明るい画面から発せられるブルーライト
スマホやパソコン、テレビの画面、LED照明などから発せられる光に含まれるブルーライトも、眠りが浅くなる原因の一つです。
夜間にブルーライトが含まれる光を浴びると、体内時計の調節が乱れ睡眠と覚醒のリズムが崩れたり、脳が「現在は朝である」と勘違いして活性化し、眠りが浅くなったりしてしまいます。
ストレス
心身のストレスも、浅い眠りに繋がりやすい要因です。ストレスによって自律神経の乱れが起きると、睡眠の質が低下してしまいます。
自律神経には、「交感神経」と「副交感神経」の2種類があり、交感神経が優位になると「活動モード」に、副交感神経が優位になると「リラックスモード」になって眠気が生じます。
スムーズな入眠を実現したいのであれば、夜になるにつれて副交感神経が優位な状態に上手く切り替えることが不可欠です。
しかし、「仕事で嫌なことがあった」「責任ある仕事を抱えている」「試験を間近に控えている」など、日常的なストレスによって自律神経が乱れると、夜になっても交感神経が優位な状態が継続して脳が活動モードのまま休まらず、眠れなくなるケースがあります。
渥美正彦
医療法人上島医院院長
ストレスだけでなく、心身の病気に対する薬の中には睡眠を浅くさせたり、夢の原因になったりするものがあります。
血圧の薬、うつ病の薬、風邪薬など意外な薬が睡眠に影響している場合があるので、気になる場合は主治医にご相談ください。
就寝環境
就寝環境が不適切な場合、眠りが浅くなる可能性があります。
例えば、照明をつけた状態では、心地良い睡眠に必要な「メラトニン」の分泌が抑制され、眠りにくくなります。
メラトニンを減少させないためには寝室を真っ暗な状態にすることが理想です。ただし、不安を感じる場合は、常夜灯や豆電球、間接照明などを活用することも選択肢として検討しましょう。
眠りが浅く夢を見るのは病気?
「夢を見るから病気」というわけではありません。しかし、病気が関係することで眠りが浅くなる可能性もあるため、注意が必要です。
考えられる病気として、以下のようなものがあります。
- 睡眠時無呼吸症候群:いびきや無呼吸などの睡眠呼吸障害で、睡眠の質が低下する
- 精神疾患(うつ病など):眠りが浅く、睡眠時間のわりに熟睡感が得られない「不眠症」を併発するケースが多い
- 花粉症・喘息:症状によって眠りが妨げられ、眠りが浅くなる
眠りが浅い場合、原因が一つだけでなく複数絡み合っている可能性もあります。
病気の治療を行うのはもちろん、睡眠の質を高めるために生活習慣を見直すことも大切です。
なお、睡眠に関する病気については、以下の記事でも詳しく紹介しています。ぜひこちらもご一読ください。
睡眠の質を高めるための改善策
ここからは、質の高い睡眠をとるために気をつけたい日々の習慣について紹介します。
- 食生活を見直す
- 就寝環境を整える
- 寝具を買い替える
日常に取り入れやすいものばかりであるため、実践して睡眠の質を高めましょう。
食生活を見直す
消化が悪い食べものを就寝直前に食べるのは避けてください。就寝前に食事をとると、体が消化を優先するので脳が覚醒し、眠りが浅くなる原因になります。
夜間どうしてもお腹が空いた時には、ヨーグルトなど消化に良いものを食べると良いでしょう。
また、眠りが浅くなる原因になり得るカフェインやアルコールの摂取は、就寝前には避けて、温かいものを飲むなどしましょう。
温かい飲みものは、白湯やハーブティー、ホットミルクなどに変えることがおすすめです。
就寝環境を整える
就寝環境は睡眠の質に直結する大事なポイントなので、室温や湿度にも注意してください。
温度は、夏場は約25℃~26℃、冬場は約22℃~23℃、湿度は50%~60%がおすすめです。
睡眠の質を高めるためには、就寝前の明るい光を避けることも有効とされます。
明かりがないと眠れない方は、明るさの調整ができる照明を使い、最低限の明るさに調光すると良いでしょう。
また、就寝前のスマホやタブレット、パソコンなどの使用は、ブルーライトによって脳が活性化して眠りが浅くなります。
夜寝る時にはテレビなど大きな音・光の出るものは消して、うるさい音や明るすぎる光を防ぐことで、睡眠へスムーズに移れるでしょう。
寝具を見直す
体に合うマットレスや枕を使うことも、気軽にできる対策です。基本的には、寝返りを打ちやすく自分が快適に眠れる寝具を使うようにしましょう。
枕の高さは、寝方によって選び方が異なります。仰向けと横向き、それぞれの理想の寝姿勢は以下のとおりです。
- 仰向け寝:背骨が緩やかなS字カーブを描く状態
- 横向き寝:頭から背骨が真っすぐになる状態
枕を選ぶ際には、上記の姿勢を保てる高さのものを選ぶことをおすすめします。
マットレスを選ぶ際には、体圧分散性に優れており適度な反発力があるかを確認しましょう。就寝中に体にかかる負担を軽減させるためには、上手に寝返りを打って血行を促進させることが重要です。
体圧分散性と反発力に優れていれば、体が押されるようにして寝返りを打ちやすく、体の一部だけに体圧が集中してしまうことを避けられる可能性があります。
快適な睡眠を得るためには、枕とマットレスのどちらも大切なので、自分にとって寝心地が良いと感じる寝具を選ぶよう心がけてください。
以下の記事では、低反発・高反発マットレスについて詳しく解説しています。興味がある方はぜひチェックしてみてください。
まとめ
夢は誰もが見るものなので、怖い夢や不快な夢を見るからといって病気だというわけではありません。
ただし、眠りの浅さが関係して夢を見ている可能性もあるため、眠りが浅いことを自覚している方は、睡眠の質を高めて熟睡できるよう日々の生活習慣にもこだわりましょう。
なお、眠りが浅くなる原因としては、「喫煙や飲酒」「明るい画面から発せられるブルーライト」「ストレス」「就寝環境」が挙げられます。
熟睡するには、ストレスを溜めすぎない、眠る前の過ごし方を改める、寝室環境を整える、などの対策を行うことが重要です。
規則正しい生活を送ることが質の良い睡眠には不可欠なので、寝具の見直しなど、日常生活で取り組みやすいことから始めてみてください。