昔から「食べてすぐ寝ると牛になる」といわれるとおり、食後すぐの睡眠は太りやすくなるとされています。また、太りやすくなるだけでなく、睡眠や健康にも悪影響を与える可能性があります。
しかし、食べてすぐ寝るのは具体的にどう良くないのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、食べてすぐ寝ることが良くない理由を詳しく解説します。食後の理想の過ごし方や食べてすぐ寝る場合に適した食事も紹介するため、ぜひ参考にしてください。
食べてすぐ寝ると太りやすくなるって本当？
夜に食べてすぐ寝る場合、食べた食事がエネルギーになりにくく、脂肪として蓄積されやすいため、太りやすくなります。
食事後すぐ寝る習慣がある方は、肥満体質になる可能性があるため注意が必要です。夕食は就寝の3時間前までには済ませると良いでしょう。
太りやすくなるメカニズム
食べてすぐ寝ると太りやすくなるメカニズムには、「BMAL1（ビーマルワン）」というタンパク質が関係しています。
BMAL1は、脂肪を蓄えることやエネルギーに変えることをDNAに働きかける司令塔の役割を持つタンパク質です。
BMAL1と体内リズムには密接な関係があり、22時頃から多く分泌され、日中の分泌量は少ないことがわかっています。そのため、BMAL1の分泌量が多い夜の時間帯に食事をして寝ると太りやすくなります。
なお、BMAL1は太陽光とも深い関係があり、BMAL1を減らすには朝日をしっかりと浴びることが大切とされているため、起床後はカーテンを開けて日の光を浴びましょう。
宮田直輝
宮田胃腸内科皮膚科クリニック 院長
「夜遅くに食べると太る」のは、分子レベルで解明されています。脂肪を溜め込むための酵素を増やす働きをする『BMAL1（ビーマルワン）』というタンパク質があり「脂肪を蓄積せよ！」という司令塔の役割を持っています。
さらに、体内リズムとも密接な関係があり、時間帯によって増減します。昼に少なく、夜に増える特性があるのです。
また、夜は臓器が休息している時間で体も動いていないので、エネルギーとして消費するより脂肪として蓄積しやすくなります。
食べてすぐ寝ることには不眠・病気のリスクもある
食べてすぐ寝ると太りやすくなるだけでなく、以下のリスクもあります。
- 睡眠の質が低くなる
- 逆流性食道炎のリスクがある
- 脳卒中のリスクがある
それぞれ解説します。
睡眠の質が低くなる
「最近寝つきが悪い」と感じている方は、食べてすぐ寝る習慣が原因かもしれません。
食事をしてすぐ寝ると、睡眠の質が低くなる可能性があります。これは、食事の消化活動中に寝ていることが原因です。
食事をしてすぐ眠ると、寝ている際に体内で消化活動が行われ、その活動によって脳が刺激されます。
食事をしてから消化するまでには3時間程度かかるといわれており、この間に眠ると目が覚めやすくなったり、深い睡眠に入れなかったりする場合があります。
就寝前に消化活動を終わらせるためにも、夕食は就寝3時間前までには済ませましょう。
宮田直輝
宮田胃腸内科皮膚科クリニック 院長
寝る直前に食事をとると、体は消化を優先するため「脳は働いているが、体は休んでいない」状態になり、睡眠の質が下がる可能性が高くなります。
また、食事に刺激物が含まれていたり、カフェインを含む飲料を摂取したりすると、寝つき自体も悪くなります。
逆流性食道炎のリスクがある
食べてすぐ寝ると、胃の中の胃酸が逆流しやすくなり、その結果、逆流性食道炎を発症する可能性があります。
逆流性食道炎は、胃の内容物が食道に逆流する病気です。発症すると、胸焼けや酸っぱいものが上がってくる感覚が症状としてあらわれます。
また、逆流性食道炎を発症している方が食べてすぐ寝ると、症状が悪化するだけでなく食道がんのリスクも高くなります。
脳卒中のリスクがある
食べてすぐ寝る行為は、脳卒中のリスクを高めることにも繋がるため注意しましょう。
食後は消化吸収を行う胃腸に血液が送られるため、大脳の血液の量が減ります。その状態で寝ると脳が血液不足となり、脳卒中を引き起こす場合があります。
なお、脳卒中のリスクを軽減するには、食後30分の休憩をとったうえで軽い運動を行ってから寝ることをおすすめします。
食後30分〜1時間はゆったり体を休めることが理想
食べたものを消化するには、胃や腸に多くの血液が必要です。しかし、食後に激しい運動をすると血液が筋肉に多く流れるため、胃や腸に流れる血液が不足します。
食べてすぐ寝ると前述したリスクがありますが、食後30分〜1時間はソファや椅子に腰かけてゆったり体を休めることが理想です。横になっても構いませんが、寝ないように気を付けましょう。
昼食後の仮眠にはメリットがある
睡眠と仮眠は似た言葉ですが、睡眠は夜に熟睡すること、仮眠は浅い眠りのことを指します。食後にしっかり睡眠を取ることは良くありませんが、昼食後の仮眠には以下2つのメリットがあります。
- 頭がすっきりする
- 集中力アップに繋がる
それぞれ詳しく解説します。
頭がすっきりする
食後は胃や腸に血液が多く流れるため、頭に血液が不足して眠くなることがあります。強い眠気が生じた時は、少しだけ仮眠すると脳が活性化して頭がすっきりします。
仮眠で脳を休めることは体の疲労回復にも繋がり、大きなメリットがあります。
集中力アップに繋がる
眠気があって集中力が散漫になっている時は、仮眠して眠気をとると集中力アップに繋がります。
ただし、長時間寝ると脳が完全に休息するため、逆効果です。効率良く仮眠のメリットを得るには、眠りが浅い間に起きることが大切です。
昼食後の仮眠のとり方
昼食後の仮眠の時間は、15分～30分程度に留めましょう。15分～30分程度であれば、夜の睡眠に影響が出にくいうえに頭や体がすっきりし、午後も活発に活動できます。
一方、昼寝の時間が長すぎる場合は深い眠りに入ってしまい、目が覚めるまでに時間がかかることで集中力が低下する可能性があるため気を付けてください。
昼寝の際は事前にアラームをセットするなどして、寝過ぎないように工夫することをおすすめします。
なお、昼寝の効果やポイントは以下の記事で詳しく解説しています。併せてご一読ください。
宮田直輝
宮田胃腸内科皮膚科クリニック 院長
昼食食後10分から15分ほどの睡眠はノルアドレナリンという成分の分泌を促します。これは新陳代謝を高め太りにくいからだにしてくれる成分です。眠気を我慢して昼間の時間を過ごしてしまうと、ノルアドレナリンが上手く分泌されません。
また、睡眠不足は食欲を増進します。昼寝はストレス解消にもなるためそれもダイエット効果が得られると考えられます。
食べてすぐ寝る場合に適した食事とは
前述のとおり、寝る前の食事は、就寝3時間前までに済ませることが理想です。
しかし、残業で帰宅が遅くなる場合など、事情によってはも食べてすぐに寝なければいけないシーンもあるでしょう。
その際は、脂肪の多い揚げ物や丼物などは避け、米やパンなどでんぷん質を中心としたメニューにすることをおすすめします。
でんぷん質は消化吸収が1時間程度と早いため、睡眠の質に影響する要素が少ないです。消化吸収が早い分、消化中に寝ることで発症する病気も防ぎやすくなります。
ただし、量が多いと消化する時間も長引くため注意してください。
また、食後すぐ寝る場合は、ヘルシーなメニューを心がけることも大切です。ヘルシーなメニューでも、ささみや豆腐など消化に良い材料を工夫して調理すれば、満腹感を得られます。
消化がしやすい材料を使ったレシピはインターネットに数多く掲載されているため、「帰宅が遅くなったけれど、しっかり食べたい」という方は探してみると良いでしょう。
どうしても夕食が夜遅くなってしまったら？
食事をとる時間がどうしても夜遅くなる場合、以下のポイントを意識することが大切です。
- 食後30分～1時間は眠らない
- 食後に軽めの運動を行う
- 翌日早起きする必要がない場合は就寝時間を遅らせる
食後30分～1時間は眠らない
夕食が夜遅くなった場合は、ヘルシーなメニューを心がけるだけでなく、食後にすぐ眠らないように意識することが重要です。
先述したとおり、食後すぐの就寝は睡眠の質の低下や肥満に繋がるほか、胃の働きが低下して消化不良を起こす可能性もあります。
食後直後の睡眠で発生するデメリットを防ぐには、ある程度の休息の時間を食後に設けることが大切です。
忙しいと時間を作ることが大変かもしれませんが、食後の時間で休息を取る場合には、30分から1時間程度、眠らないように注意しながら体を休めると良いでしょう。
食後に軽めの運動を行う
肥満を防ぎたい方は、食後に軽めの運動を行うことをおすすめします。夜の食事で摂取した栄養分は脂肪になりやすいといわれていますが、食後に運動を行うと摂取した糖が体脂肪に変わる前にエネルギーとして消費されるため、肥満を防ぎやすくなります。
ただし、運動の内容が激しいと、胃に負担がかかる可能性があるため注意してください。胃に負担をかけないためにも、運動のメニューは軽めの有酸素運動に留めつつ、食後の30分〜1時間以内に行うことをおすすめします。
翌日早起きする必要がない場合は就寝時間を遅らせる
夕食の時間が遅くなる場合、眠るタイミングを遅らせるのも1つの方法です。夜に食べてすぐ寝るのは良くありませんが、就寝する時間が遅くなれば食後から眠るまでの間隔を空けることができます。
明日が休日など、翌日に早起きしなくても問題ない時は睡眠のリズムが崩れない程度に実践すると良いでしょう。
まとめ
食べてすぐ寝るのは、太りやすくなるだけでなく、睡眠の質が低下することや健康面に悪影響を与えるリスクがあります。
食後は眠くなりやすいタイミングですが、すぐ寝るのは避けることをおすすめします。昼寝は15分～30分程度なら問題ありませんが、夕食後は就寝時に消化活動を終わらせておく必要があるため、夕食は就寝する3時間前までに済ませることが理想です。
また、どうしても食べてからすぐに寝なければいけない時は、できるだけ消化しやすいメニューを意識しましょう。
