「夜遅くまで起きてしまい、翌日なかなか起床できず夕方頃に目を覚ます」というような乱れた生活のことを「昼夜逆転」と呼ぶことがあります。
夜中にゲームやSNSをするのは楽しいものですが、昼夜逆転の生活が続くと心身に悪影響が及ぶ可能性があるため、注意が必要です。
昼夜逆転の生活を改善するには、規則正しい生活が送れない原因などを把握し、早めに対策を行わなければなりません。
この記事では、昼夜逆転することで生活に及ぼす悪影響や、昼夜逆転の生活になってしまう原因などを解説します。改善するための方法も紹介するので、昼夜逆転の生活を送っている方はぜひ参考にしてください。
昼夜が逆転することで生活に及ぶ悪影響とは
昼夜逆転の生活が続くと、身体面に不調が生じるだけでなく精神面にも悪影響が及ぶ可能性があります。
昼夜が逆転することで生じる悪影響として挙げられるのは、主に以下のとおりです。
- 昼夜逆転による身体面への悪影響
- 昼夜逆転によるメンタル面への悪影響
- 昼夜逆転の生活が病気に繋がる可能性
それぞれの内容について、詳しく説明します。
昼夜逆転による身体面への悪影響
昼夜が逆転すると日中にだるさが残り、仕事や趣味などのパフォーマンスが低下しやすくなります。
体の免疫機能も低下し、風邪を引きやすくなったり病気にかかりやすくなったりすることも懸念点です。
また、夜の時間帯に眠れていないと、寝ている間に活発になるはずのホルモンの働きが活性化しにくくなるため、肌などの見た目にも疲れが出てしまう可能性があります。
昼夜逆転によるメンタル面への悪影響
昼夜が逆転すると、活動的な「交感神経」とリラックス状態の「副交感神経」の切り替えが上手く行われず、自律神経が乱れやすくなります。自律神経が乱れると、イライラしたり気分が落ち込んだりするため注意が必要です。
また、体に倦怠感が残ることから、何事に対してもモチベーションを持ちづらくなり、やる気も出にくくなる傾向にあります。周囲との生活サイクルのギャップゆえに、孤立感も感じやすくなるでしょう。
モチベーションが保てず、日中のパフォーマンスが低下することで「何をやっても上手くいかない」と感じると、自信の喪失にも繋がります。
昼夜逆転の生活が病気に繋がる可能性
昼夜逆転の生活を続けていると、「概日リズム睡眠障害」という病気に繋がる可能性があります。
概日リズム睡眠障害とは、体内時計の周期を24時間に適切に同調させることができないために生じる睡眠障害です。
人間の体内時計の周期は約25時間といわれており、1日の周期である24時間よりも1時間ほど長くなっています。通常であれば、日常生活におけるさまざまな刺激によって体内時計は24時間に同調していき、周期のずれは自然と修正されます。
しかし、昼夜逆転の生活を行っていると、適切な刺激を受けることができずに概日リズム睡眠障害に陥り、眠気や頭痛・倦怠感といった身体的な不調を生じる可能性があります。
また、体内時計が乱れていると高血圧になりやすく、長く続くと心筋梗塞や生活習慣病のリスクも高まるとされています。
昼夜逆転の生活を引き起こす原因
昼夜逆転の生活になる原因は人それぞれ異なりますが、主に以下が考えられます。
- 生活リズムの乱れ
- ストレス
- 環境の変化
- 病気
- 精神疾患
それぞれの原因について、詳しく説明します。
生活リズムの乱れ
SNSやゲームなどで夜更かしをして就寝時間が後ろにずれると、昼夜逆転の生活に陥りやすいです。
近年は、インターネット環境が急速に発展していることから、就寝前に布団のなかで長時間スマホを操作しているという方は多くいらっしゃるでしょう。
また、シフト制の仕事に就いており、就寝・起床時刻が定期的に変わる場合も、昼夜逆転の生活になりやすいといえます。
最近では、テレワークで出勤をしなくなった影響で仕事のオンオフの切り替えが上手くいかず、定時を過ぎても夜遅くまで働き続けてしまうケースも見られます。
仕事が終わらないと就寝が遅れ、生活リズムの乱れに繋がります。
ストレス
ストレスは、自律神経が乱れる原因の一つです。
仕事や家庭などにトラブルを抱えており、心身にストレスを受けてしまうと、睡眠の質が低下したりなかなか寝付けなくなったりする可能性があります。
また、ストレスの種である悩みについて布団のなかで考え始めると、不安が出てきて眠れなくなるケースもあるでしょう。寝付けないとコンディションが悪くなり、またストレスがたまるという悪循環に繋がることも考えられます。
環境の変化
就職や進学などによる環境の変化は、生活リズムに影響を与えやすい要素です。
新しい環境での緊張や不慣れなスケジュールにより、昼夜逆転に陥ってしまう可能性があります。
また、海外旅行による時差も体内時計に影響を与えるため、夜上手く眠れなくなり昼夜逆転してしまう原因に繋がる場合があります。
病気
「起立性調節障害(きりつせいちょうせつしょうがい)」や「睡眠相後退症候群(すいみんそうこうたいしょうこうぐん)」などの病気が原因で、昼夜逆転の生活になっている場合もあります。
起立性調節障害は、自律神経が上手く働かず、立ちくらみや頭痛などの身体症状が起こる病気です。症状の一つに起床困難があり、生活サイクルが乱れる要因になります。
睡眠相後退症候群は、なかなか寝つけない、起きるべき時間に起きられないという状態が慢性的に持続する病気で、思春期から青年期に多いと考えられています。
上述した症状に覚えがある場合は病気が原因で昼夜逆転になっている可能性もあるため、なるべく早く医療機関を受診しましょう。
精神疾患
身体的な病気だけでなく、精神疾患も昼夜が逆転する原因になる場合があります。
特にうつ病は、午前において「うつ症状」が強く、午後から夕方以降に症状が軽くなっていく傾向がある精神疾患です。
そのため、午前中は寝て昼から夕方頃に起きるといった昼夜逆転の状態になりやすいと考えられます。
精神疾患が原因の場合も、なるべく早く医療機関を受診して適切な診断を受けることを心がけましょう。
佐久間一穂
ミチワクリニック 院長
うつ症状が重い場合には、疲労蓄積の影響で朝にたくさん寝ても夜もよく眠れます。脳神経疲労を回復するために朝もゆっくり眠ることが大切です。
症状が回復してきたら、規則的な生活に切り替えましょう。
昼夜逆転の生活を改善させるための心がけ
生活リズムを改善するには、日常生活の中で心がけるべきことがいくつかあります。
昼夜逆転の生活を改善する方法は、主に以下のとおりです。
- 夜更かししない
- 朝から太陽光を浴びる
- 長い昼寝をしない
- よく動いて夜に眠気を促す
- 就寝環境を整える
それぞれの内容について、詳しく説明します。
夜更かししない
夜更かしは、昼夜逆転の状態に陥る大きな原因の一つです。
夜更かしによって朝起きられず昼夜逆転しているのであれば、夜更かしをしないよう努めることで、昼夜逆転の生活は自然と改善に向かうでしょう。
夜更かししてしまう方のなかには、早めに布団に入っているのにも関わらず、なかなか眠れないという方もいらっしゃると思います。その場合は、就寝前の行動を見直してみましょう。
例えば、スマホやパソコンから発するブルーライトには脳を覚醒させる作用があるため、就寝前の操作は避けたほうが無難です。
ベッドに入る前に温かい飲み物を飲むなど、リラックスできる行動を取り入れることもスムーズな入眠に効果的です。
佐久間一穂
ミチワクリニック 院長
昼夜逆転する以外にも習慣化した夜更かしによって起こりうる健康被害はあります。
心身が十分に休まり疲労回復するための理想的な睡眠時間は、午後10時から午前3時と言われています。この睡眠のゴールデンタイムに、十分なメラトニンの産生が生じ、成長ホルモンの分泌が促進され、副交感神経の働きも十分に機能し良好な健康状態が維持されます。
夜更かしが習慣化すると、これらの健康維持機能が低下し、心身のストレスが蓄積し様々な疾病の原因になったり、老化を加速させることになります。
朝から太陽光を浴びる
体内時計の周期は調節しないと少しずつずれてしまうため、ずれを放置してしまうと昼夜逆転の生活に繋がりやすいです。
体内時計を調節する方法としては、朝から太陽光を浴びることをおすすめします。
太陽光には体内時計をリセットする効果があるため、朝起きたらすぐに窓を開けて太陽光を浴びましょう。
また、太陽光を浴びると、睡眠を促すために欠かせない「メラトニン」の原料となる「セロトニン」が分泌されます。夜にスムーズな入眠を促すためには、朝から太陽光を浴びてセロトニンをつくっておくことが大切です。
長い昼寝をしない
規則正しい生活を心がけて早起きした際、日中に眠気が生じたのであれば仮眠をとりましょう。
15~30分程度の昼寝は、集中力を回復するためにも有効です。
ただし、仮眠の時間が長すぎると夜になっても眠気が生じず、睡眠を阻害する原因になってしまいます。そのため、昼寝をする場合は適度な時間にとどめることが重要です。
よく動いて夜に眠気を促す
日中に動いて得られる疲労感は、ぐっすり眠るために大切な要素です。日中、意識的に動いて体を程良く疲れさせておくことで、眠りにつきやすくなるでしょう。
運動を行うのであれば、早めのウォーキングや軽めのジョギングなど、負担が大きくない有酸素運動がおすすめです。
ただし、就寝直前に激しい運動を行うと、体が興奮して寝つきづらくなる可能性があるため注意してください。運動は、就寝時刻の約3時間前までに済ませることをおすすめします。
就寝環境を整える
寝室の温度・湿度・音・光といった要素は、睡眠に大きな影響を与えます。これらが適切でないと、布団に入ってからもなかなか眠れないため、理想的な環境を整えることが重要です。
理想的とされる室温は、夏場は25℃〜26℃、冬場は22℃〜23℃とされています。湿度は通年50%〜60%を目安にしてください。
就寝前に音楽を聴く方もいるかもしれませんが、眠る直前に消すか、自動で消えるように設定しましょう。部屋の蛍光灯が明るすぎる場合は、暖色系の明かりや間接照明を取り入れることをおすすめします。
枕やマットレスなどの寝具も、自分の体に合ったものにするとより眠りやすくなるでしょう。
寝具を選ぶ際には、価格や素材など確認すべきポイントはたくさんありますが、最も大切なのは「自分にとって快適であること」です。硬さや触り心地などを含めて、自分の好みに合うものを選んでください。
まとめ
昼夜逆転の生活を続けると、心身に悪影響が及ぶ可能性があります。場合によっては、概日リズム睡眠障害などの病気に繋がることもあるため、意識して生活リズムを改善させることが望ましいです。
昼夜逆転を改善するには、普段の生活から見直す必要があります。太陽光を浴びる、就寝環境を整えるなど、手軽にできることから始めてみてください。
また、昼夜が逆転することで「体調不良に陥っている」「症状がつらい」という場合には、我慢せずに医療機関を受診することをおすすめします。