しっかりと寝ているはずなのに、なぜか仕事中に眠くなる経験をしたことがある方は多いでしょう。
日中に眠気があると何事にも集中できなくなるため、眠くなってしまう原因を把握したうえで、眠気を解消させるよう努めることが大切です。
この記事では、日中に眠くなる原因や眠くなった時の対処法などを解説します。
すぐできる対策として、眠い時に押すと効果的なツボなども紹介するので、日中の眠気に悩む方はぜひ参考にしてください。
仕事中など日中に眠くなる6つの理由
仕事中をはじめとした日中に眠くなる原因は、以下のことが考えられます。
- 睡眠不足
- 糖質の摂りすぎ
- アルコールの飲みすぎ
- ストレス
- モチベーション
- ナルコレプシーなどの病気
それぞれの原因を詳しく解説します。
①睡眠不足
そもそも睡眠時間が足りておらず「睡眠負債」が溜まっていると、日中眠くなってしまいます。
睡眠負債とは、慢性的に続く睡眠不足によって、健康が害される恐れがある状態のことです。休日に「寝だめ」しても睡眠負債は解消されないため、日々の睡眠リズムを安定させることが重要です。
長期の休みなどに十分な睡眠時間を確保したら症状が改善する場合、睡眠不足が原因と考えられます。昼夜逆転の生活が当たり前になっている方は、自分が寝不足であることに気付いていない可能性もあるため、日々の起床・就寝時刻を改めて思い返してみましょう。
睡眠時間が短くなる原因として考えられる一例として、残業が多く帰宅が遅くなる、深夜までスマホを操作しているなどが挙げられます。これらの生活が続いている方は、意識的に生活を改善させることが望ましいでしょう。
②糖質の摂りすぎ
昼食後に眠気が出る場合、炭水化物を摂取しすぎて糖質過多となって血糖値が上がり、インスリンが分泌されることで眠くなっている可能性があります。
昼食をたべたあとのタイミングで眠くなることが多い方は、眠気を防ぐために以下の行動を試してみましょう。
- 野菜から食べる
- 昼食を食べすぎない
- 炭水化物を控える
- 血糖値を上げにくい食べ物を意識して取り入れる
血糖値を上げにくい食べ物とは、肉、魚、野菜、キノコ類などです。これらの食べ物を意識的に取り入れて、昼食後の眠気を防ぎましょう。
③アルコールの飲みすぎ
アルコールを飲むと眠りやすくなり、睡眠の前半は深く寝付けます。ただし、後半には睡眠が浅くなり、夜中に中途覚醒を促す可能性が上がったり、脳が休息するためのノンレム睡眠を妨げたりするため要注意です。
また、寝付きを良くするためアルコールを常飲するのも、おすすめしません。寝付きまでの時間を短くする効果は、数日ほどアルコールを摂取すると消失することがわかっています。
寝るためにアルコールを用いると徐々に摂取量が増加し、不眠を増加させたりアルコールに依存したりする原因を生み出してしまいます。
④ストレス
仕事や家庭などでストレスが蓄積していると、脳から睡眠を抑制する「コルチコトロピン」という副腎皮質刺激ホルモンが分泌されます。このホルモンが影響して、なかなか眠れない、夜中に起きてしまうといった睡眠不足が引き起こされるケースがあります。
脳は疲労物質がたまると、体に常に眠るよう促す働きがあるため、ストレスが知らずのうちに溜まっていないかチェックしてください。
また、ストレスを抱えていると、布団に入って寝ようとするタイミングでも心配事について考えてしまい、なかなか入眠できなくなるケースも考えられます。社会を生きるうえでストレスをゼロにするのは難しいため、日々上手に解消させる意識が大切です。
⑤モチベーション
遊んでいる時や休み中は目が冴えていたのに、仕事や授業が始まったら眠くなったという経験がある方もいるのではないでしょうか。実は、「眠気にモチベーションが関係しているのではないか」という研究も進められています。
これは、アデノシン受容体を持つ神経の活性状態が影響しているといわれています。アデノシン受容体を持つ神経は魅力を感じていない時に活性化され、睡眠が誘発されることが特徴です。反対にモチベーションが高く魅力を感じている時は活性状態が抑制され、睡眠量が減少したり覚醒したりしていきます。
⑥ナルコレプシーなどの病気
日中の眠気が強く耐え難い場合、睡眠障害などの病気が隠れているケースもあるため注意しなくてはなりません。
考えられる病気には、以下のようなものがあります。
- ナルコレプシー
- 睡眠時無呼吸症候群
- 行動誘発性睡眠不足症候群
- 過眠
ナルコレプシーは睡眠障害の一種で、日中突然耐えられない眠気に襲われ、数十分眠ってしまう症状が特徴です。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠時に一時的に呼吸が止まってしまう病気で、睡眠の質を低下させるため日中眠くなってしまいます。
行動誘発性睡眠不足症候群は、睡眠時間が十分に取れず、日中の覚醒が維持できない病気です。特に若い世代は睡眠時間が不足しており、意欲や集中力が削がれる傾向のある方も多くいます。治療にはまず活動時間を記録して睡眠が足りていないことに気づき、寝る時間を伸ばすことが有効です。
過眠は睡眠時間を十分に取っているにも関わらず、昼間に強い眠気が襲う状態です。強烈な睡魔に襲われて居眠りしてしまったり、目を覚ましていられなくなったりします。
我慢できないほどの眠気が続く、眠気以外の症状も出ているなど、病気の可能性がある場合は放っておかず、すぐに医療機関を受診することをおすすめします。
眠い時に試して欲しい6つの対処法
日中に眠気がある時、目を覚まそうとさまざまなことを試した経験がある方は多いでしょう。ここでは、実際に眠気があらわれた時に使える6つの対処法を解説します。
- カフェインを摂取する
- ガムを噛む
- 顔を洗う
- ストレッチなどをして体を動かす
- アロマやおしゃべりでリフレッシュする
- 仮眠をとる
どれも気軽に試せるものなので、ぜひ試してください。
①カフェインを摂取する
カフェインには脳を覚醒させる働きがあるため、カフェインを含む飲み物を飲むと、眠気が解消される効果が期待できます。
以下が、カフェインが含まれる代表的な飲み物です。
- コーヒー
- 緑茶
- 烏龍茶
- 紅茶
カフェインが含まれるのは飲み物だけでなく、チョコレートのような食べ物にも含まれています。チョコレートには糖質も含まれており、手軽にエネルギー補給できるため、疲れている時に特におすすめです。
なお、カフェインの過剰摂取は体に悪影響を与える可能性があるため、ほどほどに摂りましょう。
楠裕司
渋谷睡眠・呼吸メディカルクリニック 院長
「コーヒーを1日何杯飲むのが体に良いか」は判明していません。1日4杯ブラックコーヒーを摂ることが糖尿病のリスクを減少させるという報告がある一方で、コーヒーの摂取がすい臓癌のリスクを増加させるという報告もあります。
また、缶コーヒーを飲む場合、微糖と書かれているものでもかなり糖分が入っているため、過剰摂取には注意が必要です。
②ガムを噛む
ガムを噛んで顎を動かすと、脳を刺激できるため眠気を覚ますのに効果的です。ガムは仕事の休憩中にも気軽に噛めるので、忙しくても取り入れやすいでしょう。
フルーツ味やミント味など、数多くの種類が販売されており、好きな味を気分に合わせて選べるところもうれしいポイントです。
ガムによる虫歯が気になる方は、キシリトール50%以上・糖質0g・酸性物を含まないものを選ぶと良いでしょう。ガムを噛んだあとは歯磨きすることも大切です。
③顔を洗う
顔を洗うのも眠気覚ましに役立ちます。特に冷たい水で洗うとスッキリし、目がさめやすいでしょう。
手や顔には多くの知覚神経が集まっており、水の冷たさが脳の刺激になります。結果として脳の覚醒レベルが上がるため、仕事や勉強のスイッチが入りやすくなります。
④ストレッチなどをして体を動かす
会議中に座りっぱなしの姿勢が続く時のように、ずっと同じ姿勢でいると眠くなりやすいため、ストレッチをしたり立ち上がったりして体を動かしましょう。
仕事中など立ち上がれないシーンでは、きちんとした姿勢を意識するだけでも効果的です。正しい姿勢で座ることで、酸素をしっかりと体に入れることができ、眠くなるのを避けやすくなります。
また、時間がある時には深呼吸をしたりトイレにいったりすると、気分転換にもなるのでおすすめです。
⑤アロマやおしゃべりでリフレッシュする
頭がすっきりとする香りのアロマを嗅ぐと、眠気を覚ましやすくなります。眠気覚ましや集中力アップに効果的とされる代表的なアロマは、以下のとおりです。
- ペパーミント
- ローズマリー
- レモングラス
- ハッカ
- ユーカリ
マスクやハンカチにアロマをスプレーして吹きかける方法なら、職場や出先でも手軽に使えます。
また、アロマだけでなく、スーッとするメントールを首回りに塗る方法もおすすめです。
休憩中であれば、職場の人とおしゃべりをして脳を使う方法にもチャレンジしてください。たわいもない話でも、声を発することですっきりと頭が冴えるでしょう。
⑥仮眠をとる
どうしても眠い時は、思い切って仮眠をとると良いでしょう。仮眠の時間は、15~30分程度が目安です。その程度の時間であれば、夜の睡眠に影響が出にくいうえに、頭や体がすっきりします。
仮眠をとる際には寝過ごしてしまわないよう、アラームをかけるのも忘れないようにしてください。
「職場で寝るのは苦手」など、眠ることが難しい場合、目を休ませるために目を閉じたり、温かいタオルやホットアイマスクを目に掛けたりする方法もおすすめです。
楠裕司
渋谷睡眠・呼吸メディカルクリニック 院長
脳は日中常に情報処理をしていますが、その情報の約8割は視覚から得ています。目を瞑ることで脳の負担が減り、α波が出て脳が休憩し、リラックス状態になります。仮眠と同様に眠気覚ましの効果が出るかは賛否ありますが、脳の疲労は減らすことができます。
眠い時に効果的なツボの押し方
眠い時には、眠気を抑えられるツボを押すのも効果的です。ここでは、眠い時に効果的なツボを5つ紹介します。
- 合谷:手の背面、親指と人差し指の骨が合流しているところのくぼみ
- 中衝:手の中指の爪の生え際より親指より2~3mm下
- 風地:首の後ろ
- 晴明:鼻の骨の上部で、目頭よりほんの少し内側
- 心:耳の中心部分
手にあるツボを押す時は、もう片方の手の親指や人差し指などで、ぐっと指圧しましょう。
「涙が出るほど痛い」と感じるくらい過剰に押すのではなく、「痛気持ち良い」感覚を目安にしてください。
必要に応じて、鍼灸院などの専門家にアドバイスを受けながら取り組むことをおすすめします。
日中に眠くならないために睡眠の質を高める方法
ここまで、実際に眠くなった時に取り組める対策について紹介してきましたが、そもそも日頃から睡眠の質を高めて、日中眠くならないように努めることも大切です。
睡眠の質を高めるためには、以下のようなポイントを意識しましょう。
- 食生活を見直す
- 適度な運動をする
- 就寝の2〜3時間前に入浴する
- 朝に日光を浴びる
- 就寝環境を整える
それぞれのポイントについて、詳細を解説します。
食生活を見直す
就寝する直前に食事をすると、体が食べ物の消化を優先して睡眠の質が低下してしまうため、夕食は寝る3時間前には済ませるようにしましょう。
食事の内容はあまり脂っこいものではなく、消化の良いものやヘルシーなものをおすすめします。生活リズムを一定に保つためにも、毎日同じ時間帯に食事を済ませることも大切です。
また、カフェインを摂り過ぎると、質の高い睡眠を阻害する原因となります。カフェインを含む飲み物は15時くらいまでに飲むようにして、睡眠前に飲むのはノンカフェインの飲み物にするよう心がけてください。
楠裕司
渋谷睡眠・呼吸メディカルクリニック 院長
カフェインの体内での半減期は4時間、影響力は5~8時間といわれています。就寝時間から逆算して、飲んで良い時間のリミットを決めておいたほうが良いでしょう。
我慢が難しい方は、コーヒー豆を寝室に置き、香りを楽しむことも有効です。コーヒーの香りはリラックス効果があり、この場合カフェインは摂取しないので、睡眠の改善に繋がります。
適度な運動をする
日中に適度な運動をして体が疲れていると、夜に自然と眠くなるため、ランニングやウォーキングなどを無理のない範囲で取り入れるようにしましょう。
運動によって体温が上昇したあと、下降するタイミングで眠気が促されるため、運動は就寝3時間ほど前に行うことがおすすめです。時間に余裕がある方は、運動する時間帯も意識して取り組んでみてください。
ただし、過度に運動しすぎると、脳が覚醒して興奮状態になってしまい、なかなか寝付けなくなる場合があります。急な運動は体に負担をかけることもあるため、無理なく適度な運動を心がけましょう。
就寝の2~3時間前に入浴する
入浴をすると一時的に体温が上昇します。その後体温が下がる時に眠気が増すため、就寝の2〜3時間前に入浴することが有効です。深い睡眠をとるには就寝直前の入浴が良いといわれていますが、寝付きを悪くするリスクもあります。
38度のお湯で25〜30分、もしくは42度程度の熱めの温度が好みならば5分程度入浴しましょう。体温が0.5度程度上昇すれば、寝付きが良くなるといわれています。体温をあげすぎると体の負担が大きくなるといわれているため、長風呂するほど良いというわけでもありません。
ゆっくりお風呂に入りたい方は、半身浴もおすすめです。湯船にお腹まで浸かるようにして、40度のお湯に30分ほど入浴してください。好みや体調に合わせて、入浴方法を選ぶと良いでしょう。
朝に日光を浴びる
朝に明るい光を浴びると、体内時計を整えます。規則正しい生活を送る助けとなるため、就寝時間を整えるのにも役立ちます。
そのほか、昼間も明るい光を浴びるのもおすすめです。昼間に光を浴びると、夜に睡眠を促すホルモンであるメラトニンが分泌されやすくなるためです。
一方で、夜に強い光を浴びるのはおすすめしません。体内時計が遅れて寝付きが悪くなる原因になります。特にブルーライトを含む光はメラトニンの分泌を抑制する原因となるので、就寝前のパソコンやスマホの操作はできるだけ避けると良いでしょう。
就寝環境を整える
就寝環境は睡眠の質に直結するポイントです。寝具や寝室の環境を整えることで、睡眠の質を高めやすくなります。
マットレスや枕が体に合っていないと、寝返りが打ちづらくなり体の一部に体圧がかかり続けてしまいます。体圧によって痛みが生じると熟睡しづらくなるため、自分の体に合っており「快適に眠れる」と感じる寝具を選びましょう。
また、寝室が明るすぎる、寒すぎることがないよう、睡眠環境を整えることも大切です。理想的な室温・湿度は、夏場は25℃〜26℃、冬場は22℃〜23℃、湿度は通年50%〜60%を目安にしてください。
光が多く寝室に入ると、脳が覚醒してしまい眠りづらくなるため、明るすぎる照明は避けて、必要に応じて間接照明を取り入れると良いでしょう。外の光が室内に入らないよう、遮光カーテンを使うのもおすすめです。
さらに、ベッドに入ってからスマホを触ると、ブルーライトの影響で目が覚めてしまうことがあります。スムーズに入眠するためにも、ベッドに入ったらスマホは触らず、リラックスした状態で目を閉じるようにしましょう。
まとめ
日中眠くなる原因として、睡眠不足やストレス、糖質の多い昼食により血糖値が急上昇してしまうことなどが挙げられます。
我慢できないほどの眠気がある、眠気以外の症状も出ているといった場合には、何かしらの病気が隠れている可能性もあるため、無理せず医療機関の受診を検討してください。
日中に眠くなった時には、ガムやアロマを取り入れて気分転換しましょう。カフェインを摂ったり、眠気覚ましに効果的なツボを押したりすることも効果的です。
そもそも睡眠不足にならないよう、睡眠の質を高めることも大切なので、まずは食事や運動などの習慣から見直してはいかがでしょうか。