仕事で食事の時間が遅くなったり、ダイエット中にどうしても空腹で寝られなかったりする人もいるでしょう。
しかし「寝る前の食事は健康に悪い」という評判から、寝る前の食事に抵抗を覚えるかもしれません。
この記事では、寝る前に食事を済ませるなら何時間前までが良いのか、寝る前の食事は体にどのような悪影響があるのか、空腹で眠れない場合に食べるならどのようなものが良いのかについてわかりやすく紹介します。
「寝る前に食べると健康に悪いのは知っているけど、空腹で眠れない」と困っている方は参考にしてください。
寝る3時間前から食事を控えたほうが良い
就寝の2〜3時間前に食事をする習慣がある人を調べた研究では、血糖値への悪影響は判断できないと報告されています。
しかしこれはあくまでも血糖値について調べた研究であり、「寝る前の食事は余分な糖質が脂肪になり肥満に繋がる」といった意見や「睡眠の質が低下する」という意見もあるため、これらの意見を踏まえと、寝る前の食事は控えたほうが良いでしょう。
食べ物の消化には2〜3時間が必要とされており、寝る直前に食事をとると体が消化を優先してしまい、眠りが浅くなる可能性があります。質の高い睡眠をとるためにも、食事は寝る3時間前までに済ませておきましょう。
また、夕食時のアルコールは、睡眠後半の覚醒度を高めるため、睡眠の質を下げる原因となるほか、利尿作用によって夜中に目覚める原因となる場合があります。
特に寝酒をすると、はじめは眠気が生じますが徐々にアルコールへの耐性がついてくるため、最初は1杯だけ飲んでいたところが物足りなくなり、飲酒量が増えやすくなるとされています。
飲酒量の増加に繋がりやすい寝酒を続けると、肥満や生活習慣病などを引き起こしやすくなるほか、アルコール依存症に陥るリスクもあるため、寝る前の過度な飲酒は控えましょう。
宮田直輝
宮田胃腸内科皮膚科クリニック 院長
夕食後から就寝の時間が短いと血糖値のピークが高くなり、燃焼する脂肪の量が減少します。またそれは食事や睡眠といった生活リズムの影響をより受けやすい可能性があります。
外来では、脂肪とタンパク質を多く含むカロリーの多い食事は消化するのに3~4時間以上かかるので、そうした食事は就寝前にはとらないほうが良いと指導しています。
寝る前の食事は控えたほうが良い理由
寝る前の食事が良くないとされている主な理由をまとめると下記のとおりです。
- 寝つきが悪くなる・睡眠の質が低下する
- 太ったり生活習慣病に繋がったりするリスクがある
- 胃もたれの原因になる
寝つきが悪くなる・睡眠の質が低下する
食後に眠気が生じるのは「インスリン」という体内ホルモンと、「オレキシン」という神経伝達物質が関わっているとする説があります。
お米やパンには糖質が含まれているため、摂取するとインスリンが分泌されて眠気が促されます。また、食事を済ませてお腹がいっぱいになると血糖値が上昇する一方、脳の覚醒を維持するオレキシンの動きが鈍くなって眠気が生じるという説もあるようです。
しかし、前述のとおり寝る直前に食事をとると、体は消化を優先するため「脳は働いているが、体は休んでいない」という状態になり、睡眠の質が下がる可能性が高くなります。
さらに、食事に刺激物が含まれていたり、カフェインを含む飲料を摂取したりすると、寝つき自体も悪くなるため注意が必要です。
「どうしても空腹で眠れない」という方や、寝る前の飲食が習慣になっている方は、後述しているおすすめの食べ物や飲み物を参考にしてください。
太ったり生活習慣病に繋がったりするリスクがある
寝る前の食事は余分な糖質が脂肪に変わり、脂肪を分解する活動が抑えられていることが原因で、肥満になりやすいとされています。
1日のカロリー摂取量を守っていても、摂取するタイミングによっては肥満の原因になる可能性があります。
また、寝る前に食事をとると消化活動により睡眠の質が低下し、睡眠不足の状態になる可能性があるため注意しましょう。
睡眠不足は食欲を抑えるホルモンを減少させ、反対に食欲を高めるホルモンを増加させるため、肥満の原因にも繋がります。
このように、睡眠不足や肥満は糖尿病、脂質異常、睡眠時無呼吸症候群などの生活習慣病に繋がるほか、生活習慣病からくる合併症のリスクも高まるなど、さまざまなデメリットがあるため注意が必要です。
胃もたれの原因になる
寝る直前の食事は胃もたれの原因にもなります。
就寝中にも消化活動は行われますが、消化機能が低下することで上手く消化しきれず、胃が荒れる可能性があります。
特に寝る前に消化の悪い脂っこいものを食べると、胃にかかる負担が大きくなるほか、習慣化すると慢性的な胃もたれを起こす原因になります。
また、食べてすぐに寝るという行為は、胃に入った食べ物が食道に逆流する「逆流性食道炎」が起こるリスクを高めるため注意が必要です。
寝る前に空腹で眠れない場合も食べてはいけない?
人は生存本能によって空腹時には覚醒度が高まるとされています。
空腹時に寝ると餓死する可能性が高くなるため、餌を狩るために集中力や緊張感が増し、アドレナリンが分泌されるというメカニズムです。
一方で空腹が満たされると、副交感神経優位の状態となり、眠気が促されます。
このような体のメカニズムから、空腹は睡眠の質を低下させる原因ともなるため「どうしても空腹で眠れない」といった場合は、食事によって睡眠を助けることも必要です。
ただし、前述したとおり消化の悪い脂っこいものや暴飲暴食、カフェインやアルコールなど覚醒度を高めるものは避けましょう。
消化の良い食べ物や、睡眠を助ける温かいおすすめの飲み物は以降で紹介します。
また、別の記事でもお腹がすいて眠れない時の対処法を紹介しています。空腹で眠れず困っている方は、ぜひ併せてチェックしてください。
寝る前の食事としておすすめの食べ物・飲み物
寝る前の食事としておすすめの食べ物・飲み物と、避けたほうが良いものの一例を紹介します。
寝る前の食事としておすすめのもの
寝る前の食事としておすすめのものは下記のとおりです。
- おかゆ
- 雑炊
- 豆腐
- バナナ
- ホットミルク
- ハーブティー
- カフェインレスの飲み物
基本的に、脂質や食物繊維が少なく柔らかいものは、消化に良いためおすすめです。
一方で、人は体温が上昇し、低下するタイミングで眠気が促されるため、飲み物は温かいものを選びましょう。
ただし、コーヒーや緑茶、紅茶などカフェインが含まれるものは覚醒作用によって寝つきが悪くなり、睡眠の質が低下するため控えてください。
上記で紹介したものは、「空腹でどうしても眠れない」といった際におすすめですが、お腹いっぱいに食べることや、暴飲暴食はいずれにしろ睡眠や健康にとって良くないため、腹八分に控えておきましょう。
宮田直輝
宮田胃腸内科皮膚科クリニック 院長
寝る前に食べるのであれば、上記以外にもスープ、味噌汁、カット野菜や低脂肪の乳製品なども良いでしょう。
寝る前の食事として避けたほうが良いもの
寝る前の食事として控えたほうが良いものの一例は下記のとおりです。
- 揚げ物やカップラーメンなど脂質が多いもの
- 脂質が多い肉(バラ肉やロース肉など)や魚(青魚やうなぎなど)
- コーヒーやエナジードリンクなどカフェインを含むもの
- アルコールなど覚醒作用があるもの
主に脂質や食物繊維が多いものは消化が悪いとされています。
カフェインを含む飲み物は、眠気を促す「アデノシン」という脳内物質を妨げる効果があり、寝る前に飲むと寝つきが悪くなるほか、睡眠の質を低下させる原因となる可能性があるので控えましょう。
アルコールはリラックス効果によって入眠しやすくなるかもしれませんが、紹介したとおり睡眠の質を低下させるほか、アルコール依存症や肥満などの原因となるため「寝酒」としての活用はおすすめしません。
宮田直輝
宮田胃腸内科皮膚科クリニック 院長
上記以外にも、就寝前に避けたほうが良い食べ物・飲み物として、ダークチョコレート、炭酸飲料、ブロッコリー、カリフラワー(消化が悪いため)、ハムやソーセージなど加工肉とチーズなどがあります。
食べすぎた翌日に心がけたいこと
「ダイエットには、寝る前の食事は良くない」とわかっていても、どうしても食べすぎてしまうことがあります。食べすぎると不安に感じるかもしれませんが、食べすぎた翌日には下記のことを心がけると良いでしょう。
- 胃腸を休ませる
- 消化の良いものを食べる
- 軽く運動する
食べすぎた翌日には、胃腸を休ませることが大切です。とはいえ、何も食べないと体が危機感を感じて脂肪を溜めやすくなるため、3食の食事を基本として、胃もたれがある場合には少しずつ食べましょう。
食事内容は、おかゆやうどんなどの消化が良いものを選びます。あまり食欲がない場合は、バナナや野菜のスムージーが便利です。
また、前日に摂取した過剰なカロリーを消費するために、ウォーキングやストレッチなどの軽い運動をしましょう。運動する時間が取れない場合は、階段の上り下りや1駅多く歩くなど、少しでも意識することをおすすめします。
まとめ
寝る直前の食事は睡眠の質や健康へ悪影響を及ぼすリスクがあるため、寝る3時間前までに済ませておきましょう。
しかし、なかには「仕事で食事の時間が遅くなってしまう」、「ダイエット中のため空腹で眠れない」という方もいるかもしれません。
空腹も睡眠の質を低下させる原因となるため、どうしても眠れない場合は紹介した消化の良い食べ物や睡眠を助ける温かい飲み物がおすすめです。
寝る前の食事は内容や量に注意し、睡眠と健康に配慮したものをとるように心がけましょう。