「自分の睡眠時間がほかの人よりも長い」「最近長く寝すぎている気がする」など、睡眠時間の長さで悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
長時間眠ってしまう原因には、睡眠負債や過度の疲労などいくつかの原因が考えられます。また、睡眠は体の休息に大切な役割を果たしますが、長すぎる睡眠には注意点があることも事実です。
この記事では、長時間眠ってしまう原因や長時間睡眠のメリットとその影響を紹介します。眠りの質を高める方法も説明しているので、睡眠で悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
日本人の平均睡眠時間
そもそも「長時間睡眠」とはどれくらいの長さの睡眠時間を指すのでしょうか。睡眠時間は人により異なるため、長時間睡眠の明確な定義はありません。
そこで、睡眠時間の基準となる平均睡眠時間を見てみましょう。日本人の成人の平均的な睡眠時間は、6時間以上8時間未満といわれています。これは、日本人に対して行った睡眠時間の調査で、6時間以上8時間未満の割合が全体の約6割を占めるためです。
なお、上記の平均睡眠時間はあくまで標準的な睡眠時間です。日照時間の長い季節、例えば夏は睡眠時間が短くなり、日照時間の短い冬は睡眠時間が長くなる傾向にあります。
また、年齢も睡眠時間に影響を与える要素です。10代前半までは平均睡眠時間は8時間以上、25歳の平均睡眠時間は約7時間、45歳の平均睡眠時間は約6.5時間といわれており、年齢が高くなるほど睡眠時間は短くなる傾向があります。
このため、平均睡眠時間は6時間以上8時間未満を基準に、季節や年齢を加味して考えると良いでしょう。そして、その基準を上回る睡眠時間の場合、長時間睡眠となっている可能性があります。
長時間眠ってしまう原因
次に、長時間眠ってしまう原因を見てみましょう。人が長時間眠ってしまう場合にはいくつかの原因が考えられます。ここでは、以下の4つの視点から理由を説明します。
- 睡眠負債
- 疲労やストレス
- 普段の睡眠の質が低い
- 個人の体質
睡眠負債
睡眠負債とは、本来必要とされていた睡眠時間の不足が蓄積した状態のことです。例えば、7時間ほどの睡眠が必要な方の場合で、6時間未満の睡眠時間が続くと、足りない睡眠時間が負債のように蓄積し睡眠負債へと繋がります。
睡眠負債の状態となった場合、足りない睡眠時間を回復しようと長時間眠ってしまうケースがあります。睡眠負債は自分では意識しにくいレベルの睡眠不足が原因となる場合もあるため、注意が必要です。
疲労やストレス
体に疲労やストレスが溜まっている場合、長時間睡眠の原因となります。体や脳の状態を回復させ、ストレスを除去するために、より多くの休息が必要となるからです。また、風邪や外傷など体の回復が必要な場合も、睡眠時間が長くなる傾向にあります。
なお、休息をとっても疲労感がとれず、6ヶ月以上の強い全身倦怠感や思考力・注意力低下が続く場合は慢性疲労症候群の可能性があるため、医療機関の受診をおすすめします。
普段の睡眠の質が低い
普段の睡眠の質が低いことも、長時間眠ってしまう原因となります。睡眠の質が低いと体を回復させる睡眠本来の役割が十分に機能せず、それを体が自然と補おうとするためです。
睡眠の質を低下させる要因にはさまざまなものがあります。例えば、カフェインやニコチンには覚醒作用があるため、コーヒーやエナジードリンクなどのカフェインを含むもの、タバコなどのニコチンを含むものの就寝前の飲用はできるだけ控えたほうが良いでしょう。
また、LEDのブルーライトにはメラトニンというホルモンを分泌しにくくする作用があります。メラトニンは睡眠・覚醒のリズムやホルモン分泌のリズムを調整する大切な役割があるので、寝る前のスマホやパソコンの利用は睡眠の質を低下させる要因となります。
個人の体質
継続的に長時間眠ってしまう場合には、個人の体質の問題も考えられます。これは、ロングスリーパーと呼ばれる体質の方です。ロングスリーパーの方は、日中に問題なく活動するために普通の人よりも長めの睡眠時間を必要とします。
ロングスリーパーは体質なので、睡眠障害の国際分類に登録されてはいるものの、一概に病気と呼べるものではありません。特発性過眠症やナルコレプシーなどの過眠症と違い、十分な睡眠により日中に過度な眠気を感じることなく活動できます。
長時間睡眠のメリット
ある程度まとまった睡眠をとることで、以下のようなメリットをもたらします。
- 睡眠負債を解消できる場合がある
- 疲労回復とストレス解消に繋がる
- 成長ホルモンの分泌を促す
それぞれの項目を詳しく紹介します。
睡眠負債を解消できる場合がある
長時間睡眠は、睡眠負債による慢性的な寝不足状態を一時的に解消する場合があります。平日は睡眠時間が短く、休日にまとめて寝る方もいるのではないでしょうか。
しかし、週末の寝だめだけでは、長期間に渡って蓄積された睡眠負債の根本的な解消とはなりません。普段から自分にとって必要な睡眠時間を確保し、質の高い睡眠を心がけるようにしましょう。
疲労回復とストレス解消に繋がる
長時間睡眠は、疲労の回復やストレスの解消に役立ちます。睡眠は脳と体の疲労回復に大切な役割を果たしており、十分な睡眠をとることで自律神経が整えられ、ストレスの解消にも繋がります。
ただし、睡眠時間は長ければ長いほど良いわけではありません。疲労の回復やストレスの解消には生活リズムの安定も大切です。疲労感が強い場合は午後に15~30分ほどの仮眠をとるなど、生活リズムを乱さないように注意してください。
成長ホルモンの分泌を促す
深い睡眠中には体内で成長ホルモンが分泌されます。幼児や成長期の子どもの平均睡眠時間が成人と比較して長いのも、成長ホルモンの分泌のために一定の睡眠時間が必要だからです。
成長ホルモンは成人となった後も分泌され、代謝調節や免疫機能などに作用します。なお、長く寝ても後半は眠りが浅いことも多いため、適度な長さが大切です。
長時間睡眠が引き起こす悪影響
まとまった睡眠にはメリットがある一方、長すぎる睡眠は悪影響を引き起こす場合があります。長すぎる睡眠で起こり得る症状は以下のとおりです。
- 頭痛
- 腰痛
- 認知機能の低下
各症状の原因や特徴を詳しく見ていきましょう。
頭痛
頭痛は長すぎる睡眠で起こりやすい症状です。長時間の睡眠が脳の血管や周囲の筋肉などに作用し、結果として頭痛が引き起こされます。
長時間睡眠で生じる頭痛の種類は、主に緊張型頭痛と片頭痛の2つです。緊張型頭痛は睡眠中の姿勢が悪い場合に生じます。一方、片頭痛は長時間の睡眠で脳内の血管が拡張し、起床時の血流増加により神経が刺激され生じる頭痛です。
腰痛
睡眠中は同じ姿勢が続くことが多く、腰に一定の負担がかかります。長時間睡眠ではその状況がより長く継続されるため、腰痛の原因となる場合があります。
なお、同じ姿勢が続く状況は筋肉の血行不良を生じ、腰だけでなく、肩や首周り、背中の筋肉への影響もあるため注意が必要です。長時間の睡眠により、肩こりや背中の痛みが生じるケースもあります。
認知機能の低下
睡眠時間と認知機能の関係を調査した研究によると、4時間以下あるいは10時間以上の睡眠時間の人は、睡眠時間が7時間の人と比較して認知機能低下リスクが高いと報告されています。
睡眠で大事なのは時間ではなく質
ここまで紹介してきたように、睡眠時間は長ければ長いほど良い訳ではありません。睡眠で大事なのは時間ではなく質です。年齢や時期に応じて自分に合った睡眠時間を確保し、睡眠の質を高めるよう意識しましょう。
睡眠の質を高める方法には以下のようなものがあります。
- マットレスや枕を自分に合ったものに変える
- アロマでリラックスをする
- 入浴は就寝時間の約90~120分前に済ませる
- スマホとパソコンは就寝時間2時間前まで
マットレスや枕を自分に合ったものに変える
睡眠の質を高めるには、寝心地が大切です。寝返りが打ちやすい自分に合ったマットレスを選ぶと、ぐっすりと快適に眠ることができます。
あわせて、枕も自分に合ったものを選びましょう。しっかりした体格の方は高めの枕がおすすめです。細身の方は、低めの枕のほうが体型に合いやすく、体に負担をあまりかけることなく眠れます。
アロマでリラックスをする
アロマの香りは嗅覚に働きかけ、心身をリラックスさせる効果があります。アロマを使う場合は、ティッシュやコットンにアロマオイルを数滴垂らし、枕元などに置いておくと良いでしょう。アロマのリラクゼーション効果が睡眠の質の向上に繋がります。
入浴は就寝時間の約90~120分前に済ませる
人は深部体温の低下にともない入眠へと誘われます。そのため、就寝の一定時間前に入浴して深部体温を上げておくと、徐々に深部体温が低下し、自然と眠くなります。入浴のタイミングは就寝時間の約90~120分前がおすすめです。
スマホとパソコンは就寝時間2時間前まで
先述のように、スマホやパソコンなどのLEDの光は、体を入眠へと誘うメラトニンの分泌を抑制します。スマホやパソコンの利用は就寝時間の2時間前までにし、体が自然と眠りへ向かうよう促しましょう。
まとめ
長時間睡眠は、睡眠負債や疲労・ストレス、睡眠の質の低下などの原因が考えられます。普段よりも睡眠時間が長いと感じた場合は、それまでの生活を振り返ると原因が判明する場合があります。
睡眠は体や心の休息に大切な役割を果たし、睡眠負債の解消や疲労の回復に繋がりますが、長ければ良い訳ではありません。長すぎる睡眠は頭痛や腰痛の原因となるなど問題点もあるため、適度な長さを意識しましょう。
なお、睡眠で大事な点は時間ではなく質です。毎日の睡眠の質を高め、自分に合った睡眠習慣を身に付けることが快適な睡眠に繋がります。