入浴は体を清潔に保つだけでなく、心身をリラックスさせる効果があります。お湯に浸かると体の緊張がほぐれ、そのまま眠くなることもあるでしょう。
しかし、お風呂で寝ると溺れてしまう可能性があるため、避けるべきです。なお、睡眠不足の状態で入浴すると、寝てしまう可能性が高くなります。
この記事では、お風呂に入ると眠くなる理由や、お風呂で寝てしまうと起こり得るリスクを詳しく解説したうえで、お風呂で寝ないための対策方法を4つ紹介します。
お風呂で寝てしまう主な原因
お風呂で体が温まると筋肉の緊張がほぐれるため、リラックスして眠気が生じるのは自然なことです。
お風呂で寝てしまう原因にはさまざまありますが、主な原因は睡眠不足によるものです。睡眠不足が続いて、肉体的にも精神的にも疲労が蓄積し、睡眠負債が溜まった状態になることにより、いつの間にかお風呂で眠りに落ちる(寝落ちの状態)ことがあります。
お風呂で寝てしまうと思わぬ事故に繋がる可能性があるため、眠気を感じたらお風呂から出る習慣をつけましょう。
寝落ちしてしまう原因について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
なお、睡眠不足を解消してもお風呂で寝たような状態になってしまう場合は、寝ているのではなく失神や脳の酸欠の可能性も考えられます。
特に高血圧の方は、入浴による血圧の下降で負担がかかりやすく、失神や脳の酸欠の可能性が高いため注意が必要です。
お風呂で寝てしまうことのリスク
お風呂に浸かったまま寝てしまうと、下記のように危険な症状が起こる可能性があるので注意しましょう。
- のぼせ
- 脱水症状
- 溺水(できすい)
以下では各症状の内容を解説します。
のぼせ
のぼせとは、異常な熱感を体や頭に感じている状態のことです。
お風呂の中で寝てしまい、入浴時間が延びると血管は拡張します。この時拡張した血管は、通常、入浴後に収縮しますが、収縮する働きが弱いと血管が拡張したままとなり、のぼせの症状が発生する場合があります。
なお、のぼせは以下の方法を実践すると対策できるといわれています。のぼせの症状が出やすい方はお試しください。
- 入浴中は頭に濡れタオルを置く
- お湯の温度を下げる
- 入浴時間を短くする
脱水症状
脱水症状とは、体内の水分不足が原因で起こる体の不調を指します。主な症状の例としては「めまい」「ふらつき」「頭痛」「口の渇き」が挙げられますが、重症の場合は意識障害やけいれん、昏睡などの症状に繋がる場合もあるので注意が必要です。
特に入浴中は汗をかきやすく、体の水分が失われやすい状態です。長時間お風呂の中で過ごすとそれだけ水分が失われてしまい、脱水症状を引き起こす可能性があります。
不安な方は入浴前後に水分を摂取したうえで、「お湯の温度を下げる」「入浴時間を短くする」などの対策をしましょう。
溺水(できすい)
溺水とは、浸水によって窒息をきたした状態を指します。通常、入浴中に寝ても、顔が浴槽に沈むと目が覚めて起き上がるでしょう。
しかし、深刻な睡眠不足の場合は強い眠気があるため、浴槽のお湯を吸っても目が覚めない可能性があります。
お湯の中で目が覚めないとそのまま溺水してしまい、最悪の場合は溺死する可能性も考えられます。そのため、眠気がある状態での入浴は控えましょう。
お風呂で寝てしまうのを防ぐための対策
お風呂で寝てしまうことがある方は、安全に入浴するためにも対策を取り入れましょう。お風呂で寝ないための対策としては、主に下記の4つが挙げられます。
- 飲酒後や食後の入浴を控える
- 入浴をシャワーで済ませる
- 入浴中にマッサージを行う
- アラームをかける
各対策方法の詳しい内容を以下で順番に紹介します。
飲酒後や食後の入浴を控える
お酒が体から抜けるまでは、入浴は避けましょう。
前提として、一般的に飲酒すると血管が拡張して血圧が低下します。先述したように、入浴中は体温を維持するために血管が拡張し、お湯に浸かっているだけで血圧が低下する状態です。
そのため、飲酒後に入浴する場合、お酒の効果が加わって二重に血圧が下がります。この時、血圧が大きく下がることで脳に必要な酸素を運べず、酸欠状態になる可能性が高まると考えられます。
安心してお風呂に浸かるためにも、お酒は入浴後に飲みましょう。
また、食後は血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」が起きやすい状態です。血糖値スパイクの状態が長引くと、食後に眠気が起きる場合があるため、食後の入浴には注意が必要です。
飲酒後や食後に限らず、眠くて寝てしまいそうな不安がある時や、体調不良による体力低下時も入浴を避けましょう。
なお、食後の眠気について、以下の記事でも詳しく紹介しています。ぜひこちらもご一読ください。
入浴をシャワーで済ませる
お風呂の中で寝てしまわないか心配な方は、浴槽にお湯を張って浸かるのではなく、シャワーで済ませると良いでしょう。
ただし、入浴時はお湯を張った浴槽に浸かるほうが、リラックス効果や疲労回復に期待できるといわれています。
そのため、「普段は浴槽に浸かる」「睡眠不足で眠気が強い場合はシャワーで済ませる」など、体の状態に応じて入浴方法を分けると良いでしょう。
入浴中にマッサージを行う
入浴中にマッサージを行って常に体を動かしていれば、寝落ちを防止できます。マッサージは「疲労回復」や「むくみ解消」にも役立つので、ぜひお試しください。
例えば、むくみを解消したい場合は、ふくらはぎを心臓に向かってなでるようにマッサージしましょう。揉まずになでることで、リンパの流れが良くなります。
ただし、、高血圧がある方や妊婦の方は入浴中のマッサージは避けたほうが良いでしょう。自分の体の状態に合わせて取り入れることが大切です。
また、入浴中にツボを押すのも良いでしょう。下表に、眠気覚ましに効果があるとされているツボをまとめました。
湯船に浸かりながら、これらのツボを押してはいかがでしょうか。
それぞれのツボの位置や具体的な効果をさらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
アラームをかける
入浴の際に、スマホなどのアラームを鳴らすことも一つの方法です。
「アラームを止めてから再度寝てしまう」「1回では起きられない」といったことも考慮して、短い間隔で何度も鳴るように設定しておくことをおすすめします。
なお、お風呂でアラームを使う時は、スマホや目覚ましがお湯で故障しないように、防水ケースや防水タイプの製品を使用しましょう。
お風呂での眠気防止には睡眠不足を解消することが大切
お風呂で寝てしまうことを防ぐには、普段から自分にとって十分な睡眠時間を確保して、質の高い睡眠をとることが大切です。睡眠不足の解消には、以下の3点を意識しましょう。
- 自分に合った睡眠時間を知り、確保する
- 仮眠をとる
- 睡眠の質を高める
日本人の平均的な睡眠時間は6~8時間とされていますが、個人差があるため、自分に合った睡眠時間は人それぞれです。
昼間に眠気を感じたり、集中力が低下したりする場合は、睡眠時間が不足している可能性があるため、これらを目安として考えてください。 昼間に眠気を感じた場合は、我慢せず15分程度の仮眠をとりましょう。その時は、あらかじめアラームをセットし、寝過ぎないように工夫することをおすすめします。
また、短すぎる睡眠時間でも睡眠不足を防ぐためには、睡眠の質を高める必要があります。睡眠の質を高めるには、寝る直前の食事や電子機器の操作を控え、寝室の環境を整えて照明を暗めに調整します。
睡眠の質向上のために知っておきたい入浴方法
睡眠の質向上のためには、入浴するタイミングや温度・入浴時間に気を配ることが大切です。日頃から下記のポイントをを意識して入浴することでも睡眠の質を高めることができます。
- 就寝時間の90分〜120分前に入浴する
- 38℃のぬるめのお湯で25分~30分程度入浴する
- 半身浴なら40℃ほどのお湯で30分程度入浴する
- 42℃の熱めのお湯で5分程度入浴する
睡眠不足の方は、睡眠の質を高めるために就寝時間の90分〜120分前に入浴すると良いでしょう。
人の体は、深部体温が下がることで眠気が訪れるため、就寝時間の90分〜120分前に入浴すると、上昇した深部体温がお風呂上がりに下がり、ちょうど良いタイミングで眠気が訪れます。
寝る直前にお風呂に入りたい方もいるかもしれませんが、お風呂上がりすぐは体が温まっていて寝付きにくい傾向にあります。お風呂上がりにスキンケアなどをしながら、眠気が生じるタイミングを待つことをおすすめします。
上記の方法を取り入れ、睡眠不足解消を目指してみてください。
まとめ
お風呂で体が温まるとついウトウトしてしまいますが、そのまま眠ると脱水症状をはじめとした体の不調に繋がる可能性があります。安全に入浴するためにも、入浴中は寝ないように気をつけてください。
なお、睡眠不足の状態で入浴すると、お風呂の中で寝る可能性が高くなるため注意しましょう。お風呂の中で寝てしまわないか不安な場合は、「お湯の温度をぬるめに設定し、入浴時間を短くする」「シャワーで済ませる」「入浴中にマッサージやツボ押しをする」「飲酒後や食後の入浴を控える」「アラームをかける」といった対策を行いましょう。
また、日頃から睡眠不足を感じている場合には、自分に合った睡眠時間を知り、昼間に適度な仮眠をとるなど、紹介した睡眠の質を高める方法を取り入れてください。