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2022.11.18 更新

【医師監修】タンパク質不足による睡眠への影響は?効率的に摂取できる食品も紹介

【医師監修】タンパク質不足による睡眠への影響は?効率的に摂取できる食品も紹介

睡眠とタンパク質には深い関係があります。それは、タンパク質を含む食品を摂取して睡眠ホルモンの生合成に必要なアミノ酸を体内に供給する必要があるためです。

この記事では、タンパク質と睡眠の関係について詳しく解説します。そのうえで、タンパク質が不足した場合に起こる症状や、効率的にタンパク質を摂取できる食品、推奨されるタンパク質の摂取量も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

  1. タンパク質不足と睡眠の関係
  2. タンパク質が不足した際に起こる睡眠に関する症状
  3. 睡眠リズムが乱れる
  4. 眠りにくくなる
  5. うつ病などの病気に陥る可能性がある
  6. タンパク質の摂取目安
  7. まとめ

タンパク質不足と睡眠の関係

タンパク質を構成するアミノ酸の一種「トリプトファン」は、神経伝達物質(「睡眠ホルモン」とも呼称)である「セロトニン」や「メラトニン」の生合成に不可欠な物質です。セロトニンには、睡眠・覚醒リズムを整える作用があり、メラトニンには睡眠を促す作用があります。

タンパク質を含む食品の摂取から睡眠ホルモンの生合成までの過程は、以下のようになります。

  1. 食品に含まれるタンパク分子が、消化管でアミノ酸(トリプトファンなど)に分解される
  2. トリプトファンやビタミンB6、ナイアシン、マグネシウムが、脳内の「縫線核」(ほうせんかく)という神経細胞の集まりに血流などで運ばれ、セロトニンが生合成される
  3. 脳内の「松果体」に運ばれたセロトニンが、前駆物質としてメラトニンの生合成に使われる

トリプトファンは、タンパク分子を構成する20種類のアミノ酸のうち、体内で生合成できない「必須アミノ酸」に分類されるため、食品から摂取しなければなりません。

タンパク質が不足した際に起こる睡眠に関する症状

上述したように、タンパク質が不足すると、タンパク質に含まれるトリプトファンも欠乏することになります。そして、必然的にセロトニンやメラトニンの生成量・分泌量が減少し、睡眠に影響を及ぼします。

タンパク質が不足すると、以下に示す問題が生じる可能性があります。

  • 睡眠リズムが乱れる
  • 眠りにくくなる
  • うつ病などの病気に陥る可能性がある

それぞれについて詳しく説明します。

睡眠リズムが乱れる

セロトニンの働きによって、サーカディアンリズム(24時間周期のリズム)と、睡眠・覚醒に伴う神経活動(睡眠・覚醒機能)が統合され、「24時間周期の睡眠・覚醒リズム」が形成されています。

しかし、タンパク質(トリプトファン)が不足すると、生合成されるセロトニンの量も減り、睡眠リズムが適切に調整されなくなる可能性があります。

眠りにくくなる

上述したように、メラトニンには睡眠を促す作用があります。

しかし、タンパク質(トリプトファン)が不足すると、セロトニンの量が減るため、必然的に生合成されるメラトニンの量も減少します。そのため、メラトニンの作用をあまり受けられず眠りにくくなる可能性があります。

うつ病などの病気に陥る可能性がある

トリプトファンなどから生合成されるセロトニンには、睡眠・覚醒リズムを整える作用だけではなく、「精神を安定させる」「やる気を起こす」といった作用もあります。

タンパク質不足によりセロトニンの分泌量が減少すると、精神面で不安定さが増し、無気力で憂うつな状態になるなど、心身の不調が招かれます。この状態が継続するとうつ病などの病気に陥る可能性があります。

関根一真

関根一真

アーチクリニック 院長

トリプトファンのほかに、メチオニン、チロシン、フェニルアラニンなどのアミノ酸もうつ病にかかわる主な栄養素といわれています。

タンパク質の摂取目安

タンパク質の摂取目安

タンパク質を多く含む食べ物を摂取することが重要になります。

以下は、トリプトファンを多く含む食品の例です。

  • 魚介類(にしん、カツオ、サケなど)
  • 豆類(大豆、豆腐、納豆など)
  • 乳製品(牛乳、チーズなど)
  • 肉類(牛肉、豚肉など)

また、非妊婦・非授乳婦の場合について、年代・性別・身体活動レベル別の「1日に摂取するタンパク質の目標量」は、下表のとおりです(※1)。

性別男性女性
身体活動レベル
1~2歳31~48g29~45g
3~5歳42~65g39~60g
6~7歳44~68g49~75g55~85g41~63g46~70g52~80g
8~9歳52~80g60~93g67~103g47~73g55~85g62~95g
10~11歳63~98g72~110g80~123g60~93g68~105g76~118g
12~14歳75~115g85~130g94~145g68~105g78~120g86~133g
15~17歳81~125g91~140g102~158g67~103g75~115g83~128g
18~29歳75~115g86~133g99~153g57~88g65~100g75~115g
30~49歳75~115g88~135g99~153g57~88g67~103g76~118g
50~64歳77~110g91~130g103~148g58~83g68~98g79~113g
65~74歳77~103g90~120g103~138g58~78g69~93g79~105g
75歳以上68~90g79~105g53~70g62~83g

身体活動レベルとは「1日あたりの総エネルギー消費量を、1日あたりの基礎代謝量で割った指標」であり、以下のようになります。

  • レベルⅠ:大部分が座位で静的な活動のケース
  • レベルⅡ:座位中心の活動であるものの、「職場内での移動」「立位での作業・接客」「通勤・買物・家事」「軽いスポーツ」のいずれかを含むケース
  • レベルⅢ:移動や立位の多い活動をしているケース、あるいは、スポーツなど余暇における活発な運動習慣があるケース

また、「どのような料理を、1日にどのくらい食べれば良いのか」という目安を下記に示すので、ぜひ参考にしてください。

主にタンパク質の供給源となるのは「主菜」(肉、魚、卵、大豆および大豆製品などを主原料とする料理)ですが、1日の主菜の目安量は3~5SV(サービング)であることを覚えておきましょう。

「SV(サービング)」とは料理に含まれる栄養をカウントする際の単位であり、1SVに含まれるタンパク質の量は約6gです。代表的な食品・料理のSVは、以下のようになります(※2)。

  • 冷奴や納豆1パック、目玉焼き1個(卵1個を使用した料理):1SV
  • 1人前の焼き魚、魚のフライ、マグロとイカの刺身:2SV
  • ハンバーグステーキ、豚肉の生姜焼き、鶏肉のから揚げといった肉料理1人前:3SV

あくまでも目安であり、上記のように簡単に表せないケースもあることにご留意ください。実際には「主菜以外のおかずにも肉類が含まれている」場合があるほか、年齢・性別・身体活動レベルによって推奨量は変わります。

(※1)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」から引用。
(※2)農林水産省「実践食育ナビ」から引用。

関根一真

関根一真

アーチクリニック 院長

動物性タンパク質(肉や魚など)と植物性タンパク質(豆腐や納豆など)をおかずとしてバランス良く食べることで、脂肪分を抑えつつ、タンパク質を効率良く摂取できます。また牛乳などの飲料を加えることもおすすめです。

まとめ

タンパク質に含まれるトリプトファンは、セロトニンやメラトニンの生合成に欠かせません。不足すると、うつ病などの病気になったり、睡眠リズムが乱れたり、眠りにくくなったりする可能性があることにご留意ください。

なお、タンパク質は、卵、魚介類、豆類(豆腐、納豆など)、牛乳(乳製品)、肉類に多く含まれます。ご自身の年齢・性別・身体活動レベルに合わせて、必要とされる量のタンパク質を摂取しましょう。

この記事の監修者
関根一真
関根一真アーチクリニック 院長
医療法人社団SUI理事長、アーチクリニック院長。呼吸器専門医、総合内科専門医。在宅医療を中心に、幅広い疾患に対する地域医療を行っている。専門は内科全般(生活習慣病や認知症、がん全般など)、特に呼吸器内科(気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群など)には力を入れている。臨床現場では睡眠障害とそれを引き起こす様々な背景に対する全人的なサポート、診療を行う。
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