常に頭を支えてくれている首は体のなかでも負担が生じやすく、痛みが発生しやすい部位です。場合によっては、寝違えたような痛みが生じることもあります。
首を寝違えたような痛みを放置すると日常生活に支障が出てしまう可能性もあるため、できるだけ早めの対処が必要です。この記事では、首を寝違えたような痛みの種類、治し方などを詳しく解説します。
首を寝違えたような痛みの種類や症状
首の痛みと一口にいっても、痛みにはさまざまな種類があります。よくある痛みの例としては、「筋肉痛のような痛み」や「腕や手にしびれを伴う痛み」が挙げられます。
このうち、筋肉痛のような痛みが生じる場合は、寝違えによって痛みが起きている可能性が考えられます。
寝違えによる痛みは、筋肉痛のような痛みが首や肩にかけて生じるのが特徴です。ひどい場合は痛みで首を動かせない時もあり、軽症であれば数日、重症であれば2週間以上痛みが続くといわれています。
一方、しびれを伴う痛みがある場合は、頚椎椎間板ヘルニアや頚椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)など首の病気を発症している可能性も考えられます。
首の痛みの原因は病気の発症にある可能性が考えられる以上、自分で症状の種類を判断するのは良くありません。痛みがなかなか引かない時は、素直に医療機関に相談すると良いでしょう。
寝違える原因
寝違えによって首の痛みが生じている場合は、今後予防をするためにも寝違えの原因を取り除きましょう。寝違えてしまう主な原因は、主に下記の2つにあると考えられています。
- 睡眠時の姿勢
- 肩こり
以下で詳しい原因を順番に紹介します。
睡眠時の姿勢
寝違えの主な原因は、睡眠時に無理のある姿勢をとっているためだと考えられています。
不自然な寝姿勢をとっている場合でも、通常であれば無意識に寝返りを打つことで首に負担がかからない体勢に戻ります。
しかし、何らかの理由によって寝返りが打てず不自然な寝姿勢が続くと、首への負担が増え、寝違えに繋がってしまいます。
寝返りが打てない原因はさまざまですが、よくある例としては「狭い場所で眠っている」「枕やマットレスなどの寝具が体に合っていない」などの原因が考えられます。思い当たる点がある方は、この機会に就寝環境を見直してみましょう。
肩こり
肩こりがひどい場合、寝違えやすい状態になってしまうので注意してください。
血行不良が原因で肩こりが生じることは広く知られていますが、頚椎の変性をきっかけに起きる場合もあります。頚椎の変性による肩こりが長く続くと筋肉が傷みやすくなってしまい、少しの負担で寝違えに繋がってしまいます。
小林洋平
医療法人社団 淳英会 Jメディカルおゆみの 院長
肩がこりやすい人の特徴としては、下記の要素が考えられます。
①骨格:頸椎の生理的前弯が少ない(所謂ストレートネック)方や加齢に伴う頸椎の変形など
②職業:同様の姿勢を保持する立ち仕事やデスクワークの方
③運動習慣の不足:筋肉内の血流定価
④柔軟性低下
⑤筋力不足:頭部を保持する筋力
⑥疲労の蓄積
寝違えによる首の痛みの治し方
一般的に、寝違えによる首の痛みは数日〜1週間程度で改善される場合が多いといわれています。しかし、寝違えが改善されるまで痛みを我慢し続けるのがつらいと感じることもあるでしょう。
そこで、首の痛みの治し方を4つ紹介します。どれも自分で実践できる方法なので、寝違えた際はぜひ試してみてください。
首が強く痛む場合は氷で冷やす
首に強い痛みがある場合は、痛みがある部分を氷で冷やすのがおすすめです。冷やすことで神経の伝達が弱まり、首の痛みが楽になります。
ただし、長期間冷やし続けると血液の循環が低下してしまい、寝違えが治りにくくなるので注意してください。痛みが引いてきた際は、冷やすのを一度止めて様子を見ましょう。
慢性的な痛みには首を温めるのが効果的
寝違えの痛みを緩和するには、患部を温めるのも効果的です。温めることで首の筋肉が緩むため、痛みを抑えやすくなります。
患部を冷やすべきか、温めるべきか悩む場合は、痛みの種類に応じて対処しましょう。前述したように、急な痛みで患部が熱を持っている場合は冷やすのがおすすめです。一方、慢性的な痛みがある場合は、患部を温めると痛みが引きやすくなります。
なお、急な痛みがある状態で患部を温めると炎症が強くなってしまい、痛みが増す可能性があるので注意してください。
小林洋平
医療法人社団 淳英会 Jメディカルおゆみの 院長
急性炎症が生じると、血管が拡張して局所の血流が増加します。拡張した血管から血液成分の滲出が生じ、組織の腫れ(浮腫)やサイトカインと言われる痛みを感じる物質が放出されます。その反応を最小限にするため急性期には冷却が推奨されますが、温めると逆に炎症を助長する可能性があります。
湿布を貼る
寝違えの痛みには湿布も有効です。湿布には痛みを抑える成分が含まれているため、首に貼ることで楽になります。
なお、湿布には冷感湿布と温感湿布がありますが、それぞれ痛みを抑えるという効果に違いはありません。自分が使いやすいと思えるほうを選ぶと良いでしょう。
鎮痛薬を飲む
手軽に寝違えの痛みに対処したい場合は、鎮痛剤を飲むのもおすすめです。痛みが引くまでの時間は個人差がありますが、一般的な鎮痛剤であれば30分〜60分程度で効果が出るといわれています。
ただし、鎮痛剤を飲むタイミングが遅いと効果が薄くなる可能性があるので注意してください。鎮痛剤で痛みに対処する場合は、痛みを感じたタイミングですぐに服用することをおすすめします。
小林洋平
医療法人社団 淳英会 Jメディカルおゆみの 院長
痛み止めにはさまざまな種類がありますが、この場合用いるのは「NSAIDs」と言われるような消炎鎮痛剤が一般的です。効果や副作用は個人差がありますので一概には言えませんが、市販薬と処方薬とでは成分の量や濃度に違いはあるものの成分としてはほぼ同様です。
寝違えの痛みがある時にやってはいけないこと
寝違えによって首に痛みがある場合、自分がとる行動によっては痛みが増してしまう可能性があるので注意してください。例えば、寝違えている時に下記の行動をとると、痛みが悪化してしまう場合があります。
- 揉みほぐす
- 痛みを伴うストレッチ
- アルコールの摂取
以下で詳しい内容を解説します。
揉みほぐす
寝違えた際の首の痛みは患部を揉みほぐすことで緩和できるイメージがありますが逆効果となってしまう場合があるので気をつけましょう。
無理に揉みほぐすと痛みが悪化するだけでなく、神経麻痺や骨折を誘発するリスクもあります。痛みがひどい時は患部に下手に触れず、安静にするよう心がけてください。
痛みを伴うストレッチ
寝違えが軽症もしくは急性期を過ぎた後(痛みが緩和してきている状態)であれば、ストレッチをして筋肉をほぐすことで痛みの緩和に期待できます。
ただし、首の痛みを伴うストレッチは避けるようにしましょう。無理にストレッチをすると、症状が悪化してしまう場合があります。
アルコールの摂取
寝違えによる痛みがある場合は、お酒を控えるようにしてください。
炎症が起きている時にお酒を飲むとアルコールの作用によって血流が良くなる分、痛みの元になる物質も多く流れてしまい、首の痛みが増す可能性があります。
まとめ
首を寝違えた際に生じる痛みは、患部を冷やしたり、鎮痛剤を飲んだりすることで緩和できます。
反対に無理なストレッチや患部を揉みほぐす行為は、痛みの悪化に繋がる可能性があるので避けましょう。
また、寝違えを防ぐには普段の寝姿勢に気をつけることも大切です。起きた時に不自然な姿勢になっていることが多い方は、この機会に使っている寝具をはじめとした就寝環境を見直してみてください。