赤ちゃんのお世話をするうえで、苦戦しやすいのが寝かしつけです。特に、睡眠退行が起こる時期は寝つきが悪くなり、寝かしつけが難しくなるといわれています。赤ちゃんを思うように寝かしつけられず、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
この記事では睡眠退行の概要や原因、赤ちゃんが寝てくれない時の対策を解説します。
睡眠退行とは
睡眠退行とは、これまでよく眠っていた赤ちゃんの睡眠パターンが良くない方向に変化する現象のことを指します。
例えば、「以前はよく眠っていたのに急に寝つきが悪くなった」「夜中に何度も起きるようになった」などの現象は睡眠退行に当てはまります。
睡眠退行は生後4ヶ月~1歳半より前に現れやすいといわれており、場合によっては繰り返し起こる可能性もあります。
白濱龍太郎
RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長
浅い眠りを繰り返していた赤ちゃんが、成人のような深い睡眠と、浅い睡眠を定期的に繰り返すようなサイクルに変化していく時期に、大脳辺縁系の急速な発達とともに起こります。
生後5ヶ月から6ヶ月を超えると落ち着いてくることが一般的です。
睡眠退行が起こる主な原因
赤ちゃんに睡眠退行が起こる原因は、主に下記の2つにあるといわれています。
- 脳が発達するため
- 睡眠リズムが完全ではないため
詳しい内容を順番に見ていきましょう。
脳が発達するため
睡眠退行の原因は、脳の部位の一つ「大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)」の発達が関係していると考えられています。大脳辺縁系は、人間の感情や欲求を司る部位で、この部分の成長が進むと赤ちゃんは自分の感情を泣いて表現できるようになります。
就寝のタイミングで感情を刺激するような出来事が起こると、赤ちゃんが感情を表現するために泣いてしまい、寝かしつけが難しくなる可能性があります。
睡眠リズムが完全ではないため
大人は睡眠中に、眠りが浅い「レム睡眠」と、眠りが深い「ノンレム睡眠」を約90分周期で繰り返しています。赤ちゃんも成長に伴い、一般的な大人のようにレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返すようになります。
しかし、赤ちゃんの睡眠リズムは完全ではなく、新生児のうちは眠りが浅いレム睡眠をとる時間帯が多くなることがあるとされています。眠りが浅い分、覚醒する頻度が増えるため、睡眠退行が起こる時期は「赤ちゃんの寝つきが良くない」と感じることが多いかもしれません。
睡眠退行の時期に赤ちゃんが寝てくれない時の対策
睡眠退行の時期に赤ちゃんがなかなか寝てくれない時は、対策として下記の5つを試してみると良いでしょう。
- 入眠儀式を行う
- 赤ちゃんが不快に感じる要素を取り除く
- 朝は陽の光を部屋に入れる
- 寝かしつけの際は動画に頼りすぎない
- 遊びの内容は脳を使うものにする
これらの方法を実践すれば、赤ちゃんの寝かしつけが楽になる可能性があります。以下で詳しい内容を紹介します。
入眠儀式を行う
入眠儀式とは、眠る前に行うルーティンのことです。寝る前に入眠儀式を行うと、赤ちゃんは眠る準備を整えることができ、寝つきが良くなる効果が期待できます。
人によって入眠儀式の内容は変わってきますが、例としては「絵本を読む」「横になりながら話をする」などが挙げられます。赤ちゃんに「これをした後は眠る時間だ」と学習してもらうためにも、入眠儀式の内容は統一すると良いでしょう。
また、入眠儀式を行う時間帯も統一すると、赤ちゃんは決まった時間に寝つきやすくなります。
赤ちゃんが不快に感じる要素を取り除く
赤ちゃんは少しでも不快に感じることがあると、泣いてしまうことがあります。寝かしつけのタイミングで泣かせないためにも、赤ちゃんが不快に感じる要素は可能な限り取り除いてあげましょう。
以下は赤ちゃんが不快に感じる要素の一例です。
- 体が痛い
- 肌がかゆい
- 部屋が寒い・暑い
- お腹が空いている
また、赤ちゃんの成長が進むと精神的な不安を泣いて表現するようになります。不快に感じる要素がないにもかかわらず泣いてしまう時は、抱っこをするなどして安心させてあげましょう。
朝は陽の光を部屋に入れる
多くの人は「日中に活動して夜に就寝する」というリズムを無意識のうちに保てていますが、これは体内時計が機能しているおかげです。人間には活動と休息のリズムを維持するための体内時計が備わっており、意識しなくても夜には眠気が訪れるようになっています。
しかし、体内時計は約25時間周期でリズムを刻んでいるため、1日の時間を24時間に調整するために毎日リセットしなければいけません。
赤ちゃんの場合、体内時計の仕組みは未熟ですが、「夜は静かな明るすぎない環境で、朝は明るい環境で過ごす」という習慣を毎日繰り返すことで、少しずつ発達していきます。
体内時計は朝に陽の光を浴びることでリセットされます。そのため、起床時はにまずカーテンを開け、部屋に陽の光を取り入れましょう。体内時計を毎日リセットすれば正しいリズムが刻まれ、いつもの就寝時間に寝つきやすくなります。
白濱龍太郎
RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長
閉眼していても、まぶたを透過することで網膜に光が透過します。網膜を透過した光は、松果体や脳深部などの、眼以外の光受容器官へ到達し、体内時計をリセットする役割を果たします。
寝かしつけの際は動画に頼りすぎない
最近の動画投稿サイトでは一般的な娯楽動画や学習動画のほか、赤ちゃんを寝かしつけるための動画も増えてきました。自分の手が離せない時や忙しい時に、寝かしつけ動画に頼っている方もいるのではないでしょうか。
しかし、寝かしつけ動画に頼りすぎるのは良くありません。動画再生に使うスマホやタブレットの画面から発せられるブルーライトによって、赤ちゃんの体内時計が乱れてしまう可能性があるためです。
ブルーライトは目に見える光のなかでもエネルギーが強く、夜に浴びると脳が「昼間だ」と勘違いしてしまいます。その結果、体内時計が乱れてしまい、寝つきの悪さに繋がる可能性があります。
赤ちゃんを寝かしつけるための動画が原因で、寝かしつけが難しくなっては本末転倒です。寝かしつけ動画の活用は最低限に留め、夜の時間帯は控えることをおすすめします。
白濱龍太郎
RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長
部屋の照明に用いられるLEDにもブルーライトが含まれています。さらに、2,000lx(ルクス)以上の高照度光には、覚醒作用や交感神経系活動の亢進作用、体内時計の位相調節作用があることがわかっています。
夜間には、ブルーライト照射量が多いスマホ以外でも光全般に気を使ったほうが良いと考えられます。
遊びの内容は脳を使うものにする
赤ちゃんと遊ぶ際は、脳を使うタイプの遊びがおすすめです。脳を使うと、体が脳を休ませるように入眠を促してくれるため、赤ちゃんを寝かしつけやすくなります。
脳を使う代表的な遊びとしては、パズルや積み木などが挙げられます。知育玩具には数多くの種類があるので、赤ちゃんの成長具合に合わせて選んであげましょう。
また、「聴く」「触る」などの五感を使った遊びも脳に適度な疲労を与えるため効果的だといえるでしょう。
まとめ
睡眠退行は赤ちゃんの成長に伴って少なくなり、1歳半以降では起こりにくくなるとされています。赤ちゃんの寝つきが急に悪くなると不安になってしまいますが、あまり深く考えすぎず上手に付き合っていきましょう。
また、思うように赤ちゃんを寝かしつけられない時期は、世話をする側にも精神的なストレスが溜まりやすい傾向にあります。寝かしつけの悩みはパートナーや家族に相談し、自分1人で抱え込まないよう、意識することをおすすめします。