妊婦の方が抱える悩みで多いのが、不眠やストレスといった心身に関する悩みです。「妊娠前に比べてストレスを受けやすくなった」「寝つきが悪くなった」などの悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
こうした悩みを解決するためには、不眠やストレスの原因を把握したうえで対策をすることが大切です。
この記事では、妊婦の方が抱える不眠やストレスの主な原因を妊娠初期・妊娠中期・妊娠後期に分けて解説します。効果的な対策方法もあわせて紹介するので、ぜひご一読ください。
妊婦の方に生じる不眠やストレスの主な原因【妊娠初期】
妊娠初期に生じる不眠やストレスの主な原因は、下記の2点です。
- 女性ホルモンのバランスが変化する
- 不安を抱えやすくなる
以下で詳しい内容をそれぞれ紹介します。
女性ホルモンのバランスが変化する
女性ホルモンには「プロゲステロン」と「エストロゲン」の2種類があり、妊娠初期は妊娠を維持するために体温を上げる作用を持つプロゲステロンの分泌量が増えていきます。このプロゲステロンの作用が、妊娠初期に生じる不眠の原因だと考えられています。
人間の体は深部体温が下がることで心身が休息し、眠気が訪れるようになっています。通常、深部体温は就寝時間に自然と下がっていきますが、プロゲステロンの作用が働くと思うように体温が下がってくれません。その結果、就寝時間になっても眠気が訪れず、不眠に繋がってしまいます。
不安を抱えやすくなる
妊娠初期は、多くの方にとって特に不安を抱えやすい時期です。出産に対する不安や、自分の体の変化に対する不安を持つ方もいるのではないでしょうか。これらの不安は交感神経の緊張に繋がってしまい、その結果として不眠の原因になる可能性もあります。
妊婦の方に生じる不眠やストレスの主な原因【妊娠中期】
続いて、妊娠中期に生じる不眠や、ストレスの主な原因を解説します。
- 腰痛が起こりやすくなる
- トイレが近くなる
以下で各原因の詳しい内容を見ていきましょう。
腰痛が起こりやすくなる
妊娠をすると、胎盤から「リラキシン」と呼ばれるホルモンが分泌されます。リラキシンは、骨盤の関節や靭帯を緩める作用があるホルモンです。この作用が働くことで、出産時に赤ちゃんが骨盤を通りやすくなる効果があります。
しかし、リラキシンの作用で骨盤の関節や靭帯が緩むとお腹を支える力が弱まり、腰に負担がかかりやすくなってしまいます。その結果、腰痛を起こし、痛みが気になって眠れなくなる場合もあります。
トイレが近くなる
妊娠中は体の循環血流量が増えるため、妊娠前に比べると尿が排出されやすいことがわかっています。そのため水分の摂取量が多いと、寝ている間に何度もトイレに起きてしまい、寝不足になる可能性があります。
齋藤幹
さいとう内科・循環器クリニック院長
妊娠している場合、就寝前にカフェインを含むものやアルコール、糖分の入ったジュースを飲むことは避けましょう。麦茶はカフェインが含まれていないのでおすすめです。
妊婦の方に生じる不眠やストレスの主な原因【妊娠後期】
お腹が大きくなる妊娠後期は、不眠やストレスを特に抱えやすい時期です。この時期に生じる不眠、ストレスの主な原因としては、下記の2つが挙げられます。
- 寝返りを打ちにくくなる
- こむら返りが起こりやすくなる
以下で詳しい内容を解説します。
寝返りが打ちにくくなる
妊娠後期はお腹が大きくなっているため、就寝中に寝返りが打ちにくくなります。
寝返りは睡眠中に無意識に行われる行為で、適度に寝返りを打てていれば血液が循環し、体にかかる負担を軽減できます。一方で、睡眠中に寝返りが打てていない場合は体への負担が増え、睡眠の質が低くなってしまう恐れがあります。
こむら返りが起こりやすくなる
「こむら返り」とは、ふくらはぎの筋肉が痙攣する症状のことで、一般的には「足がつる」ともいいます。こむら返りの症状が就寝中に生じると目が覚めてしまい、不眠やストレスに繋がります。
こむら返りの主な原因は、ミネラル不足や疲労です。お腹が大きい妊娠後期は体に疲れが溜まりやすいうえ、胎児に優先的に栄養が送られるのでミネラル不足にも陥りやすいです。そのため、妊婦の方は特にこむら返りが起きやすいといわれています。
齋藤幹
さいとう内科・循環器クリニック院長
妊娠中にこむら返りが起きた場合は、つま先をお腹へ向けてふくらはぎを伸ばしてください。
また、漢方薬の「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」は妊婦の方でも服用でき、即効性があるのでいざという時のために用意しておいた方がいいでしょう。
妊婦の方におすすめの不眠・ストレスへの対策方法
不眠やストレスに悩んでいる妊婦の方は、早めに対策をしておきましょう。下記は不眠・ストレスの代表的な対策方法です。
- 就寝前はお風呂でゆっくりリラックスする
- 無理のない範囲で運動をする
- 朝は太陽の光を浴びる
- 使っている寝具を見直す
以下でより具体的な対策方法を解説します。
就寝前はお風呂でゆっくりリラックスする
不眠やストレスの悩みを解消するには、湯船に浸かるのが効果的です。
ぬるめのお湯にゆっくり浸かると、心身を休息状態に導く副交感神経の働きが高まり、よりリラックスした状態をもたらすことができます。また、リラックス効果でストレスも軽減され、精神的なゆとりを保ちやすくなるでしょう。
ただし、妊娠中は血液の量が多くなる分、のぼせやすいので注意してください。お湯の温度はぬるめの38℃前後、湯船に浸かる時間は10分程度に留めることをおすすめします。
無理のない範囲で運動をする
不眠・ストレス対策には、適度な運動も有効です。
適度な運動は寝つきを良くする効果があるといわれており、習慣的に運動を続けていれば不眠の解消が期待できます。また、運動をすると精神を安定させてくれるホルモンが分泌されるため、ストレス解消にも繋がります。
運動にはさまざまな種類がありますが、妊婦の方にも無理なく始められるウォーキングやマタニティエクササイズがおすすめです。運動しても問題ないか心配な方は、事前に医師に相談しておくと良いでしょう。
朝は太陽の光を浴びる
妊娠中に不眠の症状が生じると、どうしても生活リズムがずれてしまいます。
こうした生活リズムのずれを防ぐには、体内時計を毎日リセットすることが大切です。体内時計は朝日を浴びることでリセットされるので、朝は起床後にすぐカーテンを開ける癖をつけましょう。
また、太陽光を浴びるとストレス軽減に繋がるホルモン「セロトニン」の分泌が促され、精神的な健康も維持しやすくなります。
使っている寝具を見直す
妊娠中で不眠の症状に悩んでいる方は、この機会に使っている寝具を見直してみてはいかがでしょうか。寝具が体に合っていないと寝苦しさを感じてしまい、寝つきが悪くなる可能性があります。
特にマットレスや枕は、寝心地の良さに影響しやすいアイテムです。寝具が合っていないことを理由にマットレスや枕を買い替える場合は、できるだけこだわって選ぶと良いでしょう。
まとめ
妊娠中は女性ホルモンのバランスの変化や心身への負担、ストレスが原因で、不眠の症状が生じる場合があります。眠れない日々が続いている方は、この機会に生活習慣や寝具を見直し、不眠対策を行いましょう。
また、対策をしても不眠が続くようなら、妊婦健診の際に医師に相談することをおすすめします。