人によって寝姿勢は異なり、顔を右に向ける右向き寝で寝ている方がいます。もしくは、顔を左に向ける左向き寝を好んでいる方もいるかもしれません。
右向き寝や左向き寝は仰向き寝やうつ伏せ寝とは違ったメリット・デメリットがあります。寝姿勢は睡眠の質に影響を与えるため、肩こりや腰痛、いびきなどの対策を考えている方は寝姿勢を意識してみると良いでしょう。
この記事では右向き寝や左向き寝の違いや寝姿勢ごとのメリット・デメリットを解説します。
右向きで寝るのは体に良い?
人間の内臓は左右非対称のため、右向き寝と左向き寝では下側になる内臓が異なります。そのため、右向き寝と左向き寝だと、それぞれ違った影響を体に与えます。
例えば、右向き寝だと胃の形が体の右側に向かってカーブしているため、食べものの移動がスムーズになり消化に良いという説があります。
一方で、左向き寝だと消化器系の臓器への圧力が少なくなり負担を軽減できるので、消化作用がアップするといわれています。
また、食道への胃酸の逆流を抑制できる、重力によって便が移動(排便)しやすくなるなどの説もあります。
上記のように、右向き寝と左向き寝は両方ともメリットがあると考えられているため、片方の寝方が良いと断言できません。また、人間の体は人によって作りや形に違いがあるので、必ず上記のとおりのメリットがあるとは限りません。
吉良文孝
東長崎駅前 内科 クリニック院長
明らかに痛みを感じる場合は右向き寝を避けたほうがいいでしょう。また、右向きの場合胃酸が逆流しやすいことがあるので、食道炎の症状のある方は注意です。
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寝姿勢ごとのメリット・デメリット
一般的に、寝姿勢は次の3つに分類されます。
- 横向き寝
- 仰向け寝
- うつ伏せ寝
寝姿勢によって体に与える影響は異なるので、それぞれのメリット・デメリットを順番に解説します。
横向き寝のメリット
横向き寝のメリットは以下のとおりです。
- いびきの回数を抑えられる
- 臓器に負担がかかりにくい
- 柔らかいマットレスでも腰に負担がかかりにくい
横向き寝の最大のメリットは、舌が落ち込んで気道を塞ぐことを避けられるので、仰向け寝よりもいびきの回数を抑えられることです。
また、横向き寝は仰向け寝と違って肝臓が胃や心臓を圧迫しないため、内臓に負担がかかりにくいとされています。
ほかにも、仰向け寝だとマットレスが柔らかいと腰が沈み込みやすくて負担がかかりますが、横向き寝だと負担を軽減されることがあります。ただし、横向き寝は体の片側に圧力が集中するので、かえって腰を痛める場合があるので、注意しましょう。
横向き寝のデメリット
横向き寝のデメリットは以下のとおりです。
- 片側への負担が大きくなる
- 冷えやこりの原因になる
横向き寝のデメリットは、体の片側を下に向けるので負担が集中し、圧迫された状態となります。そのため、血行不良や筋肉の緊張などにより、体が歪んでしまう場合があります。
また、仰向け寝と比べてマットレスに体が触れる面積が狭いため、冷えやこりの原因となる可能性もあります。横向きで寝ていて、起床時にだるさや痛みなどが続く場合は、仰向き寝やうつ伏せ寝を検討してみましょう。
仰向け寝のメリット
仰向け寝のメリットは以下のとおりです。
- 体圧が分散されるので体への負担が少ない
- 血行が良くなり筋肉がこりにくい
- 腰への負担が少ない
理想的な仰向け寝は、立っている時のように背骨がS字にカーブする状態がキープできている状態です。
理想的な仰向け寝を維持できれば、体圧(体重による圧力)を背中全体に分散できるので体への負担が少なくなることが期待できます。体への負担が少なくなると睡眠の質が高くなり、血行が促され筋肉がこりにくく、腰への負担が少ないといわれています。
肩こりや腰痛に悩んでいる方は、仰向け寝が維持できるマットレスを購入してみましょう。
仰向け寝のデメリット
仰向け寝のデメリットは以下のとおりです。
- 舌が落ちこんで気道を塞ぐ
- 腸腰筋が硬い場合痛みが出る
仰向け寝だと、舌が喉の奥に落ちこんで気道を塞いでしまうので、いびき(睡眠時無呼吸症候群)の原因となります。いびきが多いと睡眠の質が下がってしまい、体に悪影響を及ぼす可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群は枕やマットレスを変えて寝姿勢を整えれば、一部の症状が解消されることはあります。しかし、完治には適切な治療が必要なので、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるなら医療機関を受診しましょう。
吉良文孝
東長崎駅前 内科 クリニック院長
いびきや睡眠時無呼吸症候群の症状が酷い場合は、呼吸器内科もしくは耳鼻科を受診するか、睡眠時無呼吸専門のクリニックを受診しましょう。
また、肥満傾向の方は痩せることが重要です。
睡眠時無呼吸症候群と枕の関係性は?寝具の選び方から自宅での検査方法まで解説
うつ伏せ寝のメリット
うつ伏せ寝のメリットは以下のとおりです。
- 自律神経が整いリラックスしやすい
- 舌が気道を塞ぎにくい
うつ伏せ寝とは、体を下にして寝る姿勢のことです。
うつ伏せ寝は、お腹とマットレスとの接触面が増えて温められやすくなるので、自律神経が整いやすくなりリラックスしやすい寝姿勢といわれています。
また、顔を下や横に向けるので、横向き寝と同様に舌が気道を塞ぎにくく、いびきの回数を抑えることができます。
吉良文孝
東長崎駅前 内科 クリニック院長
舌根が落ちやすい方はうつ伏せ寝が良いでしょう。また、うつ伏せ寝のほうが食べ物の消化が良くなる方もいます。
うつ伏せ寝のデメリット
うつ伏せ寝のデメリットは以下のとおりです。
- 体が歪みやすくなる
- 歯並びの歪みや顎関節症の原因になる
- 窒息やむくみ、吐き気の原因になる
うつ伏せ寝だと、顔を左右のどちらかに曲げて枕に押し付けて寝ています。この状態は「回旋(かいせん)」といいますが、骨の中の神経も一緒に曲がるため、手がしびれたり、体が歪み首の痛みや肩こりに繋がったりします。
また、枕に顔を押し付けているので、頭の重みで歯並びや顎が歪み、顎関節症(がくかんせつしょう)の原因になる可能性もあります。
ほかにも、胸部が圧迫されて吐き気を催す、リンパの流れを妨げてむくみの原因になる、枕で口や鼻が塞がれて窒息してしまうなどのデメリットがあります。
うつ伏せ寝はほかの寝姿勢に比べてデメリットが多いので、注意が必要です。
まとめ
右向き寝や左向き寝は舌で気道を塞がないのでいびき対策として推奨されている寝姿勢です。また、横向き寝だと内蔵への負担がかかりにくい説があります。
ただし、人間の体の作りや胃の形は個々人で違いがあるので、上記の説は参考程度に留めておきましょう。
いびき対策として推奨される一方で、横向き寝は仰向け寝に比べて体圧が肩や腰に集中しやすいというデメリットがあります。そのため、右向き寝や左向き寝は体の片側への負担が掛かりやすい寝姿勢です。
寝姿勢は睡眠の質に影響を及ぼすので、自分に負担の少ない寝方を選びましょう。