食べ物に含まれている栄養素が睡眠の質に影響を与える可能性があります。例えば、キウイの場合、含まれている栄養素により、一定期間食べた被験者の睡眠の質が向上した研究結果が報告されています。
また、キウイは不足しやすい栄養素も手軽に摂取できる果物です。ただし、キウイはアレルギー反応を起こす可能性がある果物なので、食べる際は注意が必要です。
この記事では、キウイと睡眠の関係性や注意点などを解説します。睡眠の質を高めたいと考えている方は、参考にしてください。
キウイと睡眠の関係性
キウイが睡眠に良いとされる根拠は以下のとおりです。
- キウイには睡眠に重要なトリプトファンが含まれている
- ストレスを軽減して睡眠の質を高めるビタミンCが豊富
キウイが睡眠に良いとされる根拠を順番に解説します。
キウイには睡眠に重要なトリプトファンが含まれている
人間には、サーカディアンリズムと呼ばれる24時間周期のリズムと睡眠・覚醒に伴う神経活動が見られますが、これは、セロトニンと呼ばれる物質によってコントロールされています。
セロトニンとは脳内の神経伝達物質の一つです。セロトニンが不足すると、睡眠や覚醒のリズムが乱れ、睡眠の質が低下する恐れがあります。セロトニンを体内で合成するには、必須アミノ酸であるトリプトファンとビタミンB6、光刺激などが必要です。
キウイには、セロトニンを体内で合成するために必要なトリプトファンが含まれています。また、トリプトファンからセロトニンを合成する際に必要なビタミンB6も、生で効率良く摂取できます。
横山歩依里
エルムクリニック麻布院 院長
脳内でセロトニンが不足すると、ストレスや疲労を感じやすくなったり、イライラ感、向上心の低下、仕事への意欲低下、協調性の欠如、うつ症状、不眠といった症状がみられたりします。
ストレスを軽減して睡眠の質を高めるビタミンCが豊富
キウイに含まれているビタミンCは、抗酸化作用や、抗ストレスホルモンの合成に必要な栄養素です。
ビタミンCを摂取するとストレス軽減に繋がるため、睡眠の質の向上が期待できます。一方で、ビタミンCが不足すると、抗ストレスホルモンが合成されにくくなるため、ストレスに対する抵抗力が弱くなります。
種類にもよりますが、一般的なキウイにはビタミンCが1個当たり71mg含まれています(※)。ビタミンCの推奨量は成人の場合で100mgなので、キウイ1個とほかの食品で1日分の推奨摂取量を摂取可能です。
(※)参考:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
睡眠に効果的なキウイの食べ方
睡眠に効果的なキウイの食べ方は以下のとおりです。
- キウイは寝る前に食べる
- キウイは生のまま食べる
睡眠に効果的なキウイの食べ方を順番に解説します。
キウイは寝る前に食べる
2011年に台北医科大学で行われた研究では、就寝の1時間前にキウイを食べた場合、被験者の睡眠の質が向上したという結果が出ています(※)。
そのため、キウイは朝や昼ではなく、就寝の1時間前に食べることが望ましいと言えるでしょう。
横山歩依里
エルムクリニック麻布院 院長
就寝前にキウイを食べる場合は、食べ合わせに気をつけましょう。
食べ合わせを避けたほうが良いものとして、バナナが挙げられます。バナナには、でんぷんを分解するアミラーゼが含まれており、キウイにはプロテアーゼというたんぱく質分解酵素が含まれています。
それぞれが持つ酵素の違いが、消化に影響を与え、栄養素の吸収が悪くなるという見解があります。
食べ合わせの相性が良いものとして、ヨーグルトが挙げられます。ヨーグルトには善玉菌である乳酸菌が豊富に含まれているため、悪玉菌を減らして腸内環境を整えたり、腸のぜん動運動を促したりする働きがあります。
食物繊維であるペクチンを豊富に含むキウイとの食べ合わせで、より整腸作用が期待できます。
(※)参考: National Center for Biotechnology Information:「Effect of kiwifruit consumption on sleep quality in adults with sleep problems」
キウイは生のまま食べる
キウイには、トリプトファンやビタミンB6、ビタミンCのほかにも、食物繊維やカリウムなどの栄養素が含まれています。
上記の栄養素の中には加熱や冷凍をすると、栄養素が壊れて失われる場合があります。
例えば、キウイを冷凍した場合、解凍方法によってはビタミンB6の損失量が増える場合があるので、解凍したキウイを摂取してもビタミンB6を上手く摂取できず、睡眠の質の向上に繋がりにくくなる可能性があります。
また、就寝前に冷たいものを摂取すると、胃腸に負担がかかります。そのため、キウイは冷凍せずに生のまま食べましょう。
キウイを食べる際の注意点
キウイを食べる際の注意点は以下のとおりです。
- キウイを食べた時にアレルギー反応を起こす可能性がある
- キウイの皮はよく洗ってから食べる
キウイを食べる際の注意点を順番に解説します。
キウイを食べた時にアレルギー反応を起こす可能性がある
キウイは、果物の中でアレルギーの発症頻度が高い傾向があります。また、大抵の果物は加熱するとアレルギー反応を起こしにくいとされていますが、キウイは微量の摂取や加熱をしてもアレルギー反応を起こす可能性が高いです。
キウイのアレルギー反応が気になる方は、針で皮膚の中に少量のアレルゲンを入れる「プリックテスト」や、アレルゲンを貼り付ける「パッチテスト」、少量のアレルゲンを実際に食べてみる「経口負荷試験」などを受けて確認しましょう。
横山歩依里
エルムクリニック麻布院 院長
アレルギー反応が出た場合に、呼吸が苦しくなるようでしたらすぐに救急要請してください。
反応を抑えるためには、原因食物の摂取を控えることが基本となりますが、症状が頻繁に出る時期には、これに加えて抗アレルギー薬の内服が必要となります。
キウイの皮はよく洗ってから食べる
商品にもよりますが、キウイの皮は水洗いすれば、安全面では食べることができます。キウイの皮には食物繊維やビタミンEなどが多く含まれているので、皮ごと食べるとより多くの栄養素を摂取可能です。
ただし、皮は消化に時間がかかるので、消化器官が未発達な子供や弱い方は、食べる際に注意が必要です。また、キウイには硬いヘタが付いている場合があるので、皮ごと食べる時は気を付けましょう。
キウイは睡眠の質の向上を期待できるフルーツ
キウイは、睡眠の質に影響を及ぼすセロトニンの合成に必要なトリプトファンや、ストレスを軽減させるビタミンCなどを豊富に含んでいるフルーツです。過去に行われた実験では、就寝1時間前に摂取すると、睡眠の質が向上した結果が報告されています。
睡眠以外にも不足しやすい食物繊維やカリウム、ビタミンEなどの栄養素を多く含んでいることも魅力的です。手軽に摂取できるので、睡眠の質を高めたい方は生のまま食べましょう。
ただし、キウイは、少量でもアレルギー反応を起こす可能性があったり、皮も食べる場合はしっかりと洗う必要があったりするので、食べ方には注意が必要です。