人によって寝やすい寝姿勢は異なり、顔を右に向ける「右向き寝」を好む方や、顔を左に向ける「左向き寝」を好む方もいるでしょう。
実は、右向き寝と左向き寝では体に与える影響が異なるため、体質や健康上の悩みによっても適した向きは変わります。それぞれの向きが与える影響を把握し、より心地良く眠れる向きを見つけることがおすすめです。
また、横向き寝以外に、仰向け寝やうつ伏せ寝などを含む寝姿勢は、睡眠の質に影響を与えます。肩こりや腰痛、いびきなどの対策を考えている方は、寝姿勢を意識すると良いでしょう。
この記事では、右向き寝と左向き寝の違いや寝姿勢ごとのメリット・デメリットを解説します。
「右向き」と「左向き」どちらで寝るのが良い?
人間の内臓は左右非対称のため、右向き寝と左向き寝では下側になる内臓が異なります。そのため、右向き寝と左向き寝は、それぞれ違った影響を体に与えます。
例えば、右向き寝だと胃の形が体の右側に向かってカーブしているため、食べものの移動がスムーズになり消化に良いという説があります。
一方で、左向き寝だと消化器系の臓器への圧力が少なくなり負担を軽減できるので、消化作用がアップするといわれています。また、食道への胃酸の逆流を抑制できる、重力によって便が移動(排便)しやすくなるなどの説もあります。
上記のように、右向き寝と左向き寝は両方ともメリットがあると考えられているため、片方の寝方が良いと断言できません。また、人間の体は人によって作りや形に違いがあるので、必ず上記のとおりのメリットがあるとは限りません。
明らかに痛みを感じる場合は右向き寝を避けたほうが良いでしょう。また、右向きの場合胃酸が逆流しやすいことがあるので、食道炎の症状のある方は注意です。
また、左向きで寝ることによる体への影響についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
便秘を解消したい時は右向きで寝るのがおすすめ
便秘でお悩みの方の中には、夜もお腹が張ってなかなか寝付けないという方も多いのではないでしょうか。便秘を解消したい時は、右向きで寝ることをおすすめします。
先述のとおり、胃の形は体の右側に向かってカーブしているため、右向きで寝ると重力が加わって食べものの移動がスムーズになり、消化の助けとなります。この仕組みにより便秘が解消される可能性があるため、試してみると良いでしょう。
さらに、右向き寝には自律神経への負担を軽減する効果もあり、質の高い睡眠を保つことができるというメリットがあります。
逆流性食道炎の方が右向きで寝ることはおすすめできない
右向き寝と左向き寝はそれぞれメリットがあるので、一概にどちらが良いとはいえません。
しかし、逆流性食道炎の症状がある方は、右向きで寝ることを避けたほうが良いでしょう。なぜなら、右向きで寝て食べ物の移動がスムーズになることで、食べ物が食道に戻りやすくなってしまい、胃酸が同時に流れ込んで逆流性食道炎を悪化させるリスクがあるからです。
反対に、左向きで寝れば食道と胃の繋ぎ目の角度が小さくなり、胃酸が食道に逆流しづらくなる効果が期待できるため、逆流性食道炎の方は左向きで寝ることを試してはいかがでしょうか。
横向き寝のメリット・デメリット
一般的に、寝姿勢は次の3つに分類されます。
- 横向き寝
- 仰向け寝
- うつ伏せ寝
寝姿勢によって体に与える影響は異なるので、それぞれのメリット・デメリットを順番に解説します。まずは、横向き寝から見ていきましょう。
横向き寝のメリット
横向き寝のメリットは以下のとおりです。
- いびきの回数を抑えられる
- 臓器に負担がかかりにくい
- 柔らかいマットレスでも腰に負担がかかりにくい
横向き寝の最大のメリットは、舌が落ち込んで気道を塞ぐことを避けられるので、仰向け寝よりもいびきの回数を抑えられることです。
また、横向き寝は仰向け寝と違って肝臓が胃や心臓を圧迫しないため、内臓に負担がかかりにくいとされています。
ほかにも、仰向け寝だとマットレスが柔らかいと腰が沈み込みやすくて負担がかかりますが、横向き寝だと負担を軽減されることがあります。ただし、横向き寝は体の片側に圧力が集中するので、かえって腰を痛める場合があるので、注意しましょう。
横向き寝のデメリット
横向き寝のデメリットは以下のとおりです。
- 片側への負担が大きくなる
- 冷えやこりの原因になる
横向き寝のデメリットは、体の片側を下に向けることで片側に負担が集中し、圧迫された状態になることです。体の片側が圧迫されると、血行不良や筋肉の緊張などにより、体が歪んでしまう場合があります。
また、仰向け寝と比べてマットレスに体が触れる面積が狭いため、冷えやこりの原因となる可能性もあります。横向きで寝ていて、起床時にだるさや痛みなどが続く場合は、仰向き寝やうつ伏せ寝を検討してみましょう。
なお、横向き寝の方におすすめのマットレスについては、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
仰向け寝のメリット・デメリット
次に、仰向け寝のメリット・デメリットにはどのようなものがあるのか、それぞれ確認していきましょう。
仰向け寝のメリット
仰向け寝のメリットは以下のとおりです。
- 体圧が分散されるので体への負担が少ない
- 血行が良くなり筋肉がこりにくい
- 腰への負担が少ない
理想的な仰向け寝は、立っている時のように背骨がS字にカーブする状態がキープできている状態です。
理想的な仰向け寝により体への負担が少なくなると、睡眠の質が高くなり、血行が促され筋肉がこりにくく、腰への負担が少ないといわれています。
肩こりや腰痛に悩んでいる方は、仰向け寝が維持できるマットレスの購入もおすすめです。
仰向け寝のデメリット
仰向け寝のデメリットは以下のとおりです。
- 舌が落ち込んで気道を塞ぐ
- 腸腰筋が硬い場合痛みが出る
仰向け寝だと、舌が喉の奥に落ちこんで気道を塞いでしまうので、いびき(睡眠時無呼吸症候群)の原因となることがあります。いびきが多いと睡眠の質が下がってしまい、体に悪影響を及ぼす可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群は枕やマットレスを変えて寝姿勢を整えれば、一部の症状が解消されることはあります。しかし、完治には適切な治療が必要なので、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるなら医療機関を受診しましょう。
いびきや睡眠時無呼吸症候群の症状がひどい場合は、呼吸器内科もしくは耳鼻科を受診するか、睡眠時無呼吸専門のクリニックを受診しましょう。
また、肥満傾向の方は痩せることが重要です。
うつ伏せ寝のメリット・デメリット
最後に、うつ伏せ寝のメリット・デメリットを解説します。ほかの寝姿勢との違いを確認してみましょう。
うつ伏せ寝のメリット
うつ伏せ寝とは、体を下にして寝る姿勢のことです。うつ伏せ寝のメリットは以下のとおりです。
- 自律神経が整いリラックスしやすい
- 舌が気道を塞ぎにくい
うつ伏せ寝は、お腹とマットレスとの接触面が増えて温められやすくなるので、自律神経が整いやすくなりリラックスしやすい寝姿勢といわれています。
また、顔を下や横に向けるので、横向き寝と同様に舌が気道を塞ぎにくく、いびきの回数を抑えることができます。
舌根が落ちやすい方はうつ伏せ寝が良いでしょう。また、うつ伏せ寝のほうが食べものの消化が良くなる方もいます。
うつ伏せ寝のデメリット
うつ伏せ寝のデメリットは以下のとおりです。
- 体が歪みやすくなる
- 歯並びの歪みや顎関節症の原因になる
- 窒息やむくみ、吐き気の原因になる
うつ伏せ寝だと、顔を左右のどちらかに曲げて枕に押し付けて寝ています。この状態は「回旋(かいせん)」といいますが、骨の中の神経も一緒に曲がるため、手がしびれたり、体が歪み首の痛みや肩こりに繋がったりします。
また、枕に顔を押し付けているので、頭の重みで歯並びや顎が歪み、顎関節症(がくかんせつしょう)の原因になる可能性もあります。
ほかにも、胸部が圧迫されて吐き気を催す、リンパの流れを妨げてむくみの原因になる、枕で口や鼻が塞がれて窒息してしまうなどのデメリットがあります。
うつ伏せ寝はほかの寝姿勢に比べてデメリットが多いので、注意が必要です。
理想の寝姿勢とは?
横向き寝と仰向け寝、それぞれの理想の寝姿勢を解説します。体への負担を軽減し、睡眠の質を高めるために、ぜひ参考にしてください。
横向き寝の理想の寝姿勢
横向き寝の場合は、頭から首にかけて真っすぐになった状態を保てる姿勢が理想です。枕が高すぎても低すぎても肩や首に負担となるため、高さの合う枕を使って首を支えましょう。
左右どちらの向きで寝る場合でも同様です。
仰向け寝の理想の寝姿勢
仰向けで寝る場合は、自然に立っている時と同じ姿勢が保てることが理想です。体が布団やマットレスに2~3cm沈み込むくらいが目安といわれています。
寝ている間は寝姿勢を意識できないため、背骨がS字に緩やかにカーブしている状態になるよう、適したマットレスや枕を選ぶことが重要です。
まとめ
右向き寝と左向き寝では、寝ている時に下になる内臓の違いにより、体に与える影響が異なります。
例えば、右向き寝は便秘や自律神経の乱れで悩んでいる方には向いているものの、逆流性食道炎の方には向いていません。左向き寝は消化作用の向上が期待できます。
これらを参考に、体質や悩みに合わせて寝る向きを変えてみるのも良いでしょう。ただし、人間の体の作りや胃の形は個々人で違いがあるので、上記の説はあくまで参考程度に留めておいてください。
また、右向き寝・左向き寝といった横向き寝には、「いびきの回数を抑えられる」「臓器に負担が掛かりにくい」などのメリットがある一方で、仰向け寝に比べて体圧が肩や腰に集中しやすいというデメリットもあります。
寝姿勢は睡眠の質に影響を及ぼすので、自分に適した負担の少ない寝方を選びましょう。